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「渋井哲也の気ままに朝帰り」 酔っぱらって記憶のない嬢を相手する

 自宅で夕ご飯の支度をしていた時だった。A嬢(24)から電話があった。

 「何をしてるの?」

 「夕ご飯作っていたところだよ」

 「えー、自炊するの? イメージないね」

 「一人暮らしも長いからね。で、なに?」

 A嬢とは長い付き合いだ。彼女が18歳の時に、新宿・歌舞伎町で知り合った。初めてキャバクラで働き、彼女にとって初めての同伴が私だった。以来、彼女が店を変わるたびに、たびたび客として会っている。

 A嬢は今、銀座で働いているが、まだ銀座の店には行ったことがない。そのため、いつかは行こうと思っていたが、タイミングなく行けないでいた。この日の電話もどうせ、営業電話だろう。

 「今夜はこれから何してんの? 暇なら来なよ」

 「うん、行くよ」

 数時間後、私はまだ家にいた。まだ本当に行くかどうか迷っていた。家から約1時間くらいかかるし。それにちょっと眠くなっていた。すると、またA嬢から電話がかかってきた。

 「何時に来るの?」

 「うーん、今から家を出たとして、一時間後かな」

 でも見たいテレビ番組(NHKの「ブラタモリ」)があったので、余計に迷っていたものの、あまりグダグダしていると、本当にタイミングを失うと思ったので、重い腰を上げた。

 店に行くと、すでに酔っぱらっていた。これじゃ、ほとんど記憶ないよな。

 「てっちゃんだけだよ。私のこと全部知ってるの」

 「全部? 全部は知らないぞ」

 「だって、歌舞伎町でしょ。赤坂でしょ。この店でしょ。私が移った店を全部知ってるのは、てっちゃんだけよ」

 「その全部かよ」

 もう酔っぱらいの相手をしている感じになり、何のために来たのかよくわからない状態だ。

 「ホント、てっちゃんだけなんだから」

 「ま、私も、物好きだな」

 なんて会話をしていると、余計に飲み出し、自らイッキ飲み。そして、私もイッキ飲みを“強要”してきた。少し残してしまったが、それを厳しくチェックして、

 「ほら、残ってるぞ!」

 と、さらに勧める。そこだけは冷静に見ている。そして、店長を呼び出し、

 「店長! てっちゃんだけなんだから、私のこと知ってるの。歌舞伎町でしょ。赤坂でしょ。ここでしょ…」

 って再び同じことを繰り返した。もう酔っぱらいだ。そんな顔をしていると、視線があった時に、キスをしてくる。キス魔か。店内でキスされてもな、と思って、逃げると、

 「なんで、逃げるの!」

 と怒られる。そんなことを繰り返していると、私の横で、寝てしまった。そして、酒をこぼす。かろうじて、私の服にはかからずに済んだ。

 「もうダメだ。気持ち悪い」

 なんで、そんなにはしゃいでしまったのか。それは、どうやら、失恋したことも絡んでいる。でも、今年はきっといいことがある! と自分に言い聞かせていたこともあり、テンションがあがっていたようだ。

 翌日、A嬢からメールがきた。

 「昨日はありがとう。でも、途中から記憶がないんだけど、迷惑をかけなかった?」

 さて、どんなメールを返そうか。

<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

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