会見前に背番号が発表され、伊藤は29、赤間は49とそれぞれオリックス時代とは違う番号を背中に背負って新天地での戦いに臨むことになった。
話題の大型トレードということもあって、球団事務所の会見場は報道陣が大集結して熱気があふれ、球団関係者が「いくら冷房の温度を下げても涼しくならない」と嘆くほど。そんな中、会見前にスーツ姿で現れた伊藤と赤間の顔は明らかに緊張し硬い表情を浮かべていた。特に会見慣れしている伊藤がここまで緊張するのは珍しい。今回のトレードが伊藤にとって、いかに大きな出来事だったかということだろう。
「ルーキーのように頑張りたい」
伊藤は会見冒頭、このように切り出した。トレードを通告された時には「正直驚いた」そうだが、会見場で話すうちに「実感が湧いてきた」と笑った。
「オリックスの選手、特にピッチャーから『寂しい』とかいろんな言葉をかけてもらって、キャッチャーをやってて良かったなと思いました」
直接お別れを言えなかった東北遠征中の1軍の選手からは電話でたくさんの言葉をもらったという。オリックスの各選手はSNSなどで、伊藤への気持ちを発信しているが、オフラインでも気持ちを伝えられたとのこと。
DeNAのラミレス監督は2015年にオリックスで巡回コーチに就任した際、伊藤の指導も行っている。「その時はとても熱心なイメージ。こちらから聞かなくても教えてくれたりしましたね。DeNAについては隙のない野球をしているイメージがあるので、自分もその中に入っていきたい。ピッチャーは自分よりも若いピッチャーが多い。ピッチャーを生かすも殺すもキャッチャー次第。しっかりと引っ張って、ファンの方に愛されるように全力でがんばりたいですね」と抱負を力強く語った。
いまだにやまぬオリックスファンからの惜しむ声や、エールに関しては「怪我をしている時も応援していただいて、優勝という形で恩返しできなかったのは申し訳ないと思ってます。ただ新天地に来ても全力で野球をするのは変わらないので、引き続き応援してもらえたらうれしいです」と改めて感謝の気持ちを述べた。
DeNAでは同郷の田中健二朗投手と交流があるそうで、「何処に住んだらいいかとか健二朗に電話して聞きました」と報道陣を笑わせた。
一方の赤間はオリックスのチームメイトからは「チャンスだぞ」と励まされたという。本人も「最初はビックリしたけど、今はやってやるぞという気持ち。若い中継ぎのピッチャーの中に入っていって頑張りたい」と言葉少なではあったが、闘志を燃やしていた。
伊藤に関してラミレス監督は後半戦の頭となる16日の東京ヤクルト戦(横浜スタジアム)から一軍に昇格させる考えを明らかにしている。大阪の猛牛から横浜の星の“扇の要”へ。光の新たな物語が幕を開ける。
取材・文・写真 / どら増田