そんな情況を如実に物語るように、「結核患者」が続出している実態がある。
10月21日、東京・八王子の40代の男性教諭が肺結核の発病に気づかず授業を続けたため、他の教諭や生徒など15人が結核に感染、翌22日には滋賀医大に勤める30代の女性看護師が発病していたことが判明。さらに23日は、徳島県の60代の開業医が結核に感染していたこともわかった。
医学博士(総合クリニックを営む)久富茂樹院長はこう解説する。
「結核は、結核菌によって主に肺に炎症を起こす病気です。結核菌は重症の結核患者が咳やクシャミをした時に飛び散り、それを周りの人が直接吸い込むと感染します。初期症状は風邪とよく似ていて、咳や痰が2週間以上続いたら必ず医療機関での受診を勧めます。早期発見が適切な治療につながる上、集団感染などの事例を無くすことになりますので」
そもそも、なぜ発症してしまうのか。
「わかっているのは、結核菌が呼吸器から肺に入り、どこかに落ち着くと、そこに“初感染巣”とも呼ばれるツベルクリン反応で見られるような炎症が起きる。これがそのまま血液中のカルシウムによって固まり石灰化し、結核菌はそこに閉じ込められ、発病には至らない。しかし、炎症が石灰化せず、そこから血液などが滲み出るようになり、さらに結核菌が増え始めると、それがリンパ液で運ばれ肺に広がると肺結核になります。さらにそれが腸などに広がると、腸結核になるわけです」(同)
結核で多くの人が亡くなっていた時代、死因は肺の大部分が結核菌に破壊され死亡するケースと、腸の結核で栄養が摂れずに死亡するケースと、ほぼ半々だった。
しかし、特効薬として登場したストレプトマイシンなどが結核菌による炎症の発達を止める効果によって、その後の病気の進行を抑え、治療への道筋をつける事になった。
さらに、抗生物質が利用可能(1951年)となったことは、当時の日本における死亡原因の1位だった結核を2位に後退させた最大の要因とされる。
ところが昨年10月、WHOは2012年に世界全体で新たに結核にかかった患者が860万人に上ったとする推計を発表、このうち約200万人が死亡し、さらに、結核治療薬が効きにくい「多剤耐性結核菌」の感染者が45万人存在、そのうちの17万人が死亡しているという。