そんな看護師が徹夜勤務で健康を害していないか、実際に勤務している看護師12人の白血球を調べて分析した医師がいる。『免疫力が上がる生活 下がる生活』(PHP文庫)の著者、新潟大学名誉教授の安保徹氏は、その中でこう記している。
「深夜勤務に就く前と勤務後の血液を採取して顆粒球(細菌感染に対する免疫を担う白血球の一種)とリンパ球(同じく白血球の一種で免疫機能を担当する血液細胞)の比率を調べたところ、深夜勤務前は白血球数7100個だったのが、勤務後には6200個に減少していました。その白血球中の顆粒球は49.6%が59.0%に増加し、リンパ球は46.7%から37.5%に減少していました」
徹夜によって顆粒球は増加し、リンパ球は減少したことが判明したのだ。つまり、夜間勤務で顆粒球は年齢とともに増え、リンパ球は減っていくと言うのである。それを年齢に換算すると、一晩で10歳も齢を取ったことになる。
言い換えると、約12時間の夜間勤務で10%ほどの白血球が壊されているというのだ。免疫力はそれだけ低下し、病気に対する抵抗力が落ちるわけで、前述したように高血圧や脳卒中などさまざまな病気に倒れ、過労死にもつながる。
では、どう対策を立てたらいいのか。先の東京多摩総合医療センターの脳神経内科医はこう述べる。
「若い人は、2日くらい徹夜しても大丈夫ですが、加齢とともに身体に堪えるようになります。ですから、中高年の人には避けて欲しい。徹夜で受けたダメージを食べ物で補うのは難しいし、夜間勤務のあるところは、勤務の回数を減らしてもらうか、配置換えが可能なら、積極的に訴えることも必要でしょう」
また、ある医療関係者はこうも言う。
「“寝溜め”はできませんが、実は睡眠不足は“清算”できることが、ハーバード大学医学大学院の研究により判明しています。睡眠時間は少なくなっても、その時間を適切な方法で取り戻せるというものです。例えば1週間で合計10時間睡眠不足の場合、週末に3〜4時間いつもより余分に寝るといいということです」
そして睡眠不足の時間が完済できていない場合、さらに毎日、1〜2時間余分に眠ると改善するという。
「睡眠時間の新たな借金を作らないためには、自分にとって必要な睡眠時間がわかったら、毎日その時間を確保するように心掛けることが大事です。徹夜は避けて、夜はしっかりと睡眠を取りましょう、ということです」(同)
徹夜する職業は非常に多い。漫画家をはじめ、タクシー、長距離トラック運転手、コンビニやファストフード店員などなど。しかし体を壊したら元も子ない。健康で楽しい生活を送るには、しっかりと睡眠を確保しよう。