あと、俺が今回の台風災害で特に感じたのは、テレビの報道がまったく役に立たなかったってことだよ。
台風が通過した直後は、被災地の細かい情報がほとんど報道されなくって、ひと晩明けたぐらいから、千葉の広い地域で停電していて、復旧も進んでないってことがだんだん分かってくるような状況だった。情報がないから、救援も遅れるし、物資も届かない。
テレビ局は東京にあって、千葉なんて隣だよ。それなのに、海の向こうの話みたいな時間差があった。これはもうテレビの瞬発力というか、報道する力が衰えてるんだなって思ったよ。
経費削減の影響もあるのかもしれない。近場の新宿とか銀座にはすぐ中継を出すけど、千葉くらいだとなかなか行かない。自分たちで行かないから、情報の信憑性が取れなくて、結局、なにも報じない。今回は俺もトラブルに巻き込まれて、それを実感した。
台風15号が関東を通過して、明けた9月9日の月曜日。俺はTBSラジオの『伊集院光とらじおと』という番組に午前10時から生出演するというスケジュールだった。前夜には、首都圏のJRがほぼ全部止まるってことが発表されてたから、これはクルマで行くしかないと思って、俺は朝4時に起きてテレビで台風情報をチェックしてたんだよ。
だけど、欲しい情報が手に入らない。どこどこの電車が止まってますっていうのは分かるんだけど、それで駅前がどうなってるとか、どの道路が通行止めになったとか、そういう情報はぜんぜん教えてくれない。
それでチャンネルをいろいろ変えるんだけど、呑気に通販番組を流してる局もあったりして、いま買わねぇだろってイラッときたよ。
でも、俺も甘く見てた部分はあった。高速道路は通行止めになる。電車も全部止まってて午前8時すぎぐらいに再開予定。そんな状況なら、普通の会社は休みにするじゃない? だって物理的に行けないんだから。
そう考えて、この時間に動く人間はいつもの半分くらいかなって思ってたんだよ。でも、日本人っていうのはすごい。電車が止まっているのに、とりあえず駅まで行ってみようとか、クルマで会社に向かおうとする人がたくさんいるんだよ。
午前6時30分くらいの時点で交通情報をみたら、横浜から東京に入るルートはまだそんなに混んでなかった。でも、実際に向かってみると、高速が止まってるから、下の道に降りてきたクルマが溢れ出してて、完全に止まってビクともしない状況になってしまった。
結局、間に合わなくて、クルマの中から伊集院さんに電話して謝ったよ。
そのあと、午後1時から藤波辰爾さんのドラディションっていう団体で、俺がレフェリーで出ることが決まって、その記者会見があった。みんな遅れてるから開始を午後4時に変えたけど、千葉から都内に向かってた藤波さんは辿り着けなくて、会見は藤波さん欠席でやらせてもらったよ。
とにかく、災害時に必要なのは情報だ。それに対応した、大幅な道路規制も必要だと思う。上手に時間規制をやらないと、都内の道路は麻痺するだけだよ。
今回の教訓を活かして、どんどん対応してもらいたいね。
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蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。