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本好きのリビドー(244)

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提供:週刊実話

快楽の1冊

『「日本国記」の副読本 ―学校が教えない日本史』 百田尚樹・有本香 産経新聞出版 880円(本体価格)

★「日本人の歴史」を取り戻す戦い
 ゆとり教育などと称した天下の愚策の反省から、その反動をまとめて背負う後続世代になるのか、これからの子供たちは大変そうで傍で見ていて老婆心ながらいたたまれない。

 小学校から英語が必修化だの、音楽だか体育だかに「ダンス」が取り入れられるだの、最近じゃ必須科目に“プログラミング”まで加わると聞けば隔世の感に気が遠くなるばかり。しかし、問題はあらゆる教科の中でも肝要なはずの国語と歴史、特に後者の教育現場がどうなっているのかだ。

 昭和49年生まれの筆者が通った都立高校で使用した日本史教科書の版元は山川出版社だが、この頃既に秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の折に水軍を率いて日本軍を悩ませた、とされる李舜臣はなぜか記述があるのに、世界史的意義の上でも比較にならぬほど大きい日本海海戦でロシア艦隊を全滅させた東郷平八郎は名前すら出てこない。こちとら小説や映画等で早めに“自習”済みだからこそ当時はさほど違和感を覚える暇もなかったが、本書を読む限り事態は想像以上に深刻な、病状で例えればステージ4の状態まで進行してしまったかのよう。

 先に挙げた「文禄」「慶長」はもとより、二度にわたる元寇(蒙古襲来)を意味する「文永・弘安の役」も元号は削除の揚げ句、あろうことか救国の英雄北条時宗すら全く抹殺扱いの教科書がかくもまかり通っているとは。近代以降など底意に満ちた表現で負の側面のみを強調し暗黙の刷り込みを図る、これを最悪の歴史修正主義と呼ばずして何と言おうか。

 通史を民族の物語として描いた『日本国記』の著者百田尚樹氏と、編集者の立場で支えた有本香氏の対談による製作秘話のみならず、現今教科書の暗澹たる惨状に唖然の1冊。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 著者は長谷川瞳。この名をご存じの読者も多いだろう。2001年にデビューし50本以上の作品に出演した、平成を代表するAV女優の1人だ。

 経験人数6000人を超える性の女神が著したセックス・マニュアルが『ヒアリングセックス』(KADOKAWA/1400円+税)である。元AV女優がアダルトビデオに描かれたセックスは間違いだらけ、いいセックスができない人々が増えている“元凶”と断罪している点が興味深い。

 その理由として、AVは女性がイクことが当然のように描写されているため。そんなのは幻想であり、ファンタジー。実は世の中には、一度もエクスタシーを感じたことがない女性が山ほどいるというのだ。

 潮吹きも然り。女なら誰でも吹いて当たり前とばかりに、膣内を乱暴にかき回す男がやたらと多いが、果たして、本当にセックスに必要なのか? …そういった問題が提起される。

 AVは幻想。本来のセックスとは男女が互いに気持ちを高め、気持ちよくなるための愛情表現であること。そして、コミュニケーションである以上は“ヒアリング”、話し合いが大切であることをこの本は説いている。

 長谷川さんがこうしたことを書いたのは「贖罪」、償いの意図があったからだという。誤ったセックス情報を流布させてしまった一因が、元AV女優の自分にはあった―。そんな本が出版されたのは、本邦初ではなかろうか。日本は、いよいよAVを否定する時代に入ったのかもしれない。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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