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閉幕北京五輪 偽装と疑惑の世界新

 北京五輪が24日に閉幕した。史上最多となる204の国と地域から参加した選手たちは、熱戦を繰り広げ、数々の感動とドラマを生んだ。その一方で、開会式から数々の偽装も発覚。一部からは、“ペテン五輪”と揶揄(やゆ)される大会でもあった。17日間の北京五輪を総括する。

 感動と興奮が渦巻いた選手たちの活躍の裏では、中国が行った偽装の多さも“世界新”だった。
 8日の開会式では「巨人の足跡花火」がコンピューターグラフィックスを用いた合成映像だったことが発覚した。開始直前に、北京市中心部の上空に巨人の足形のような花火が打ち上げられた。永定門から天安門を経て、メーン会場の国家体育場(愛称・鳥の巣)まで巨人が歩いて近づく様子を花火で表現したもの。だが、実際には花火は打ち上げられておらず、特殊映像を用いた演出だった。
 さらに9歳の少女が革命歌曲を歌う場面が、実際は別の7歳の少女が歌っており、“口パク”だったことも判明した。疑惑発覚直後には中国当局が報道管制を敷き、ウェブサイトネット上から「口パク報道」に関する記事をすべて削除して隠ぺいを計ろうとしたというからタチが悪い。結局13日には北京五輪組織委員会がこの事実を認めた。
 また、中国の56民族を代表したとされる子どもたちが、実際は人口の9割以上を占める漢民族の子どもだったことが明るみに出た。開会式の報道用資料には、ご丁寧にも「56の民族の子どもたち56人が中国国旗を中心に集まり、中国の56の民族を表す」と明記していたというからもはや呆れるほかない。
 開会式に関しては、中国国営の中国州王テレビが国内向けに“生中継”した際に、北京で受信したNHK衛星放送などに比べ、約5秒遅れていた事実もわかった。それでも中国国内では「大成功だった」という意見が大半を占めるというから、とんだ開き直りだ。さすがは“偽装大国”といったところか。
 体操女子段違い平行棒で、金メダルを獲得した何可欣選手には年齢詐称の疑惑にかけられた。
 女子体操は小柄な体形が有利とされており、極端な低年齢化を防ぐために、国際体操連盟は、競技開催年の年末までに16歳に達しない選手の五輪出場を認めていない。しかし、英紙タイムズによると、「ニューヨークのコンピューター専門家が中国のインターネット検索エンジンを使って、何選手が現在14歳であることを示す中国政府の公式記録にたどり着いた」という。この記事を受け、国際五輪委員会(IOC)が調査を開始する方針を決めている。
 何選手ら中国の体操女子選手の年齢詐称疑惑は、開幕前から米国のメディアを中心に報じられており、中国当局は旅券のコピーなどを示して何選手の生年月日は「1992年1月1日」と否定に躍起だった。だが、国営新華社通信は昨年11月、何選手の年齢を13歳と表記した記事を掲載していた。同記事はAP通信が、これを指摘した直後にウェブサイトから消去されている。
 タイムズ紙の報道が事実なら、何選手は金メダルをはく奪される可能性がある。中国は国別のメダル獲得数が金メダル51個。米国(36個)を押さえて堂々の1位。銀と銅を合わせた総獲得数では米国110個に対し、100個と及ばなかったが大躍進を見せた。しかし、まさかの金メダル偽装の可能性まで浮上させてしまった。
 中国が行った過剰な偽装は、これだけに留まらない。五輪会場で声援を送る観客まで“演出”だったというから驚きだ。
 13日の英紙タイムズには「偽装五輪、どこから見ても見栄え良く設計」という見出しが躍っている。当局が組織した“ボランティア応援団”が各競技場に多数送り込まれ、空席が目立つ応援席を埋めていると報じたのだ。同紙ではそろいの黄色いシャツの応援団に潜入した同紙の記者が、中国を応援するよう求められたとまで報じている。
 また、英イブニング・スタンダード紙は「入場券はほぼ完売とされるのに、中国がメダルを取れそうな競技ですら会場はガラ空き」と指摘。英デーリー・テレグラフ紙は、ロンドン五輪では「開会式でも競技でも健全さを取り戻そう」と主張した。
 偽装まみれの大会だったが、選手たちは133の五輪記録が生み出し、そのうち43が世界新記録という活躍を見せた。
 陸上男子ではウサイン・ボルトが100mと200mで異次元のスピードを見せ、400mリーレーでも母国ジャマイカを金メダル。世界記録での3冠を成し遂げた。競泳ではマイケル・フェルプス(米国)が、1大会個人史上最多となる8個の金メダルを獲得した。
 また、日本人選手では北島康介が、競泳男子100m平泳ぎで58秒91の世界新記録を樹立。200mと合わせ、アテネに続き2大会連続2冠を達成してみせた。
 数多くの偽装と疑惑が渦巻いてしまった北京五輪。しかし、選手たちが生み出した感動とドラマだけは間違いなく本物だった。

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