インターネット上のトリビアサイトなどには「電動バイブは日本が発明した」と書かれていることが多いが、実はこれはかなり疑問の残る見解である。あくまで電動式の振動型バイブレーターという意味に絞って話をすれば、その最初のものは1880年に、ビクトリア朝時代(日本では明治13年)のイギリス人医師のジョセフ・モーティマー・グランヴィルが医療用に発明し、特許を取得した『打診器(パッカソー)』が挙げられる。
大人のオモチャであるバイブが医療用とはどういうことか。それはバイブがもともと、女性のヒステリーを治療するための道具として生まれたことに起因する。当時のイギリスではヒステリーを治すための治療法は、婦人を治療台に乗せて女性器を手でマッサージして絶頂に導くというもの…つまり、性感マッサージだった。もともとヒステリーとは古代ギリシア時代の“さまよえる子宮”という言葉を語源に持つ病名で、女性にだけ見られる症状であったことから女性器と因果関係があると考えられていたのである。
男性読者の中には「夢のような治療方法」とグランヴィルの立場を役得とうらやむ声もあるかもしれないが、実はそんなこともないようだ。というのも、1850年代は女性の40%がヒステリーと診断されていた時代で、グラヴィルのもとを訪れる患者があまりに多すぎたのだ。連日ひっきりなしにこの治療をあたっていたグランヴィルは、日に日に酷使した腕の痛みに悩まされるようになり、ついにはけんしょう炎になってしまった。
治療ができないカラダになってしまい、どうにかならないものかと悩んでいたグランヴィルだったが、その時たまたま見かけた友人が開発中だった電動ホコリ払い機をヒントに、モーターで振動する電動バイブレーターを開発し、これを使ってみたところこれが婦人に大ウケ。グランヴィルは、かくして性の革命児として歴史に名を残すこととなった。
ちなみに、20世紀になるとバイブは小型になり、一般家庭にも普及するようになって、女性たちは病院に通わずに自分を慰めることができるようになったようである。バイブに、こんな興味深い歴史があったとは…!