各校に割り当てられた『甲子園球場での練習時間』は、1校30分と短い。他にやりたい練習があってもできないのが現実だが−−。
「大会中、高野連は近郊の学校グラウンドを借り、各出場校に割り当てていますが、それだけでは事足りません」(関東圏の指導者)
出場校の練習不足は今に始まった話ではない。近畿・中国地区、一部の四国勢が大会期間中、いったん母校に帰り、通常の練習をしているという。これも甲子園の舞台裏としてはよく知られた話だが、一時帰郷のできない関東甲信越、東北、北海道、九州地区の出場校は、高野連が割り当てる練習時間のほかに、「どうやって練習時間(グラウンド)を確保するか」が、重要必須事項となっている。
「全国区の学校グループは系列校のグラウンドを借りています。常連校は監督、学校関係者のツテで少しずつネットワークを広げ、グラウンドを借りられますが」(同)
初出場校や5年以上も甲子園から遠ざかっていた高校は『グラウンド確保』に苦労しているようだ。しかし、そんな“常連校有利な裏事情”を見事に跳ね返した高校もあった。
熊本県代表・城北高校(6年ぶり4回目)は近畿圏の某私立大学の野球グラウンドを借りていた。同校の末次敬典監督は社会人野球でも活躍した。ネットワークは他出場校の指導者よりも広いが、私立大グラウンドを確保できたのはそれだけが理由ではない。
「神奈川県の有名校関係者が同校とコンタクトがあり、その人物が某私立大との仲介役を務めていました」(関係者の1人)
監督個人のネットワークも重要なカギとなる。昨春のセンバツ大会の話だが、21世紀枠で出場した遠軽高校(北海道)も、初出場とは思えないネットワークを見せていた。
関係者によれば、同校の卒業生に強豪野球部を持つ有名企業の役員がいた。その役員は遠軽高校野球部との交遊はなかったが、「宜しかったら、是非」とグラウンド提供を申し出たのだそうだ。そのおかげで大会前は神奈川県で集中合宿を行うこともでき、その社会人チームのグラウンドに近い複数の高校とも練習試合を実施できた。
今後、高野連は全出場校が、平等、かつ十分な練習時間を確保できるよう、さらに努力しなければならない。全国規模のネットワーク…。強くなりたかったら、越境入学の球児確保のルートよりも『グラウンド提供』のネットワークが重要なのである。(スポーツライター・飯山満)