これに呼応するように医療界では「時間医学」が注目を集めている。「時間」と「病気の発症や体の働き」の関係を科学的なデータに基づいて検証し、築き上げた医学である。
「心筋梗塞は朝の6時から11時に集中している。自律神経が副交感神経優位から交感神経優位に切り替わる端境期は、心臓への負担が増し、不整脈が発生しやすくなる。したがって、できれば急な運動は避けて欲しいのです」
このように語るのは、生体リズムに詳しい山梨大学医学部名誉教授で、新潟県長岡市の立川メディカルセンター顧問の田村康二氏である。
年間、心臓突然死で死亡する人は6万人いるといわれており、暑い盛りの7月と冬場の12月に、そのピークを迎える。
最近では、元Jリーガーの松田直樹選手(享年34歳)が心筋梗塞で亡くなった。8月2日の午前10時頃、松本市のグラウンドでランニング中、急性心筋梗塞で倒れ、翌日、帰らぬ人となった。
元Jリーガーの突然の訃報に日本中が驚いたが、30代での心臓突然死は決して珍しくないのだ。
一方、脳梗塞は患者数140万人で、年間8万人が死亡する。
血流が止まったところは4分経過すると壊死するといわれる。
これらの疾患は時間医学を守れば、減らせることができるものだ。
「免疫力を高め、病気になりにくくするためには、生体リズムを整えることが非常に大切になってきます。そのためには、日の出と同時に起きて朝日を存分に浴びることです。太陽が地平線から昇る寸前の光は青白く、生体リズムを正常化するのに最も適しているのです。光が黄色っぽくなってしまった朝8時の起床では遅すぎます」
健康長寿を願う人がどんどん増えている昨今だが、宵っ張りの朝寝坊ではダメということだ。
では、脳梗塞や心筋梗塞の予防は、どうすればいいのだろうか。田村名誉教授が続ける。
「起床後2時間は血栓が最もできやすく、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすいことがわかっています。血圧は起床とともに急激に上昇し、動脈を急に広げ、負担がかかって血栓ができやすくなります。したがって、病気のリスクも高くなる。朝目覚めたら水をたくさん飲めば、血液の粘度が弱まり、血栓ができにくくなるといえます」
目覚めた直後の1杯の水はいいとよく言われるが、たくさん飲むことが脳梗塞や心筋梗塞のリスクを減らすことにもなるのだ。