昨シーズンは、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の3冠を獲得したばかりか、両リーグトップの10完投をマークし、2年連続の沢村賞にも輝いた。クライマックス・シリーズで菅野投手と対戦した東京ヤクルトスワローズはノーヒット・ノーランを食らっている。
6億円を超える年俸が妥当かどうかはさておき、29歳の彼が、今や日本のプロ野球を代表する投手であることは間違いない。その菅野投手は、契約更改後にこんなことを言った。
「球団の収益も全チームで上がっている。将来的には10億円もらう選手が出てもおかしくない。そういうもの(金額)を目にしたら、野球選手になりたいという子供も出てくると思う」
この発言の裏には近年の野球人口減少への懸念が込められているが、このまま米大リーグに行くことなく活躍が続けば、菅野が日本プロ野球界初の年俸10億円選手になるのも決して夢ではないだろう。
そこで、菅野投手の年俸とカルロス・ゴーン日産前会長の年収を比較してみたい。ゴーン前会長は18年6月26日の株主総会において、17年度の自身の役員としての報酬は7億3000万円だったと説明した。
この7億3000万円という役員報酬額は、16年度の10億9800万円との比較で33%減となっており、ゴーン氏の役員報酬が10億円を下回るのは4年ぶりであることが伝えられた。そこから今年の菅野投手と同水準の年収としよう。
菅野選手の報酬は基本的に「個人」としての能力、努力によって勝ち取られたものだ。彼の陰で泣いているような“犠牲者”は存在しない。ところがゴーン氏が断行したコストカットの陰では、それを支えた多くの人々の協力と助力、そしてリストラに遭った多くの人々の犠牲と涙がある。
「そもそも創業者やオーナーでもないゴーン氏の『個人』としての『能力』が、一般管理職や優秀な社員に比べて数桁も違うほどの高収入に値するものとは思えません。仮にゴーン氏の手法や実績が、一般人には真似のできない独創的で卓抜したものであったとしても、それに対する超高額報酬が10年以上もの期間に継続して与えられるべきであったのだろうかという疑問は残りますね」(経営アナリスト)
菅野投手やゴーン氏の年俸は庶民には関係ないけれど…。