屠蘇の代わりに−−というわけではないが、日本酒はおせち料理によく合う。単に和食だからという訳ではない。「お酒と料理の相性」についてなされたある研究に“似た者同士はおいしい”という理論があり、それによると、おせちと日本酒は似た者同士なのだ。
この有名な理論は“リンゴ酸”と“乳酸”のどちらの酸を多く含むかで味のタイプを分けている。
聞き慣れない名前が出て来たが、“リンゴ酸”を多く含むお酒の代表はすっきりとした辛口の白ワインで、“乳酸”を多く含むお酒の代表は熟成した赤ワイン、といえば味をイメージしていただけるだろうか。
料理に当てはめると、リンゴ酸系の調味料は塩、レモン、酢などで、乳酸系の調味料には、醤油、味噌などがある。つまり、さっぱりして冷やすとうまいグループがリンゴ酸系で、コクがあって温める(もしくは冷やさない)方がうまいグループが乳酸系だ。
おせち料理は日持ちをさせるために甘めの濃い味付けにすることが多いので乳酸系になる。赤ワイン向きということになるが、赤ワインよりももっと多くの乳酸を含むお酒が日本酒。だから、おせち料理に日本酒はぴったりなのだ。
乳酸系は、温めるとうまくなるグループ。日本酒のお燗は、寒いときに体を温めるためというより、実は乳酸の旨味を引き出して味を豊かにするための飲み方なのである。ただしリンゴ酸を多く含む大吟醸酒は例外で、お燗してもおいしくはならないから要注意だ。
今度のお正月は、お酒とおせち料理の“うんちく”を家族に披露してみてはいかがだろうか。
師走になると、旬のお酒として「生酒」が発売され始める。しかし、一年を通じて「生貯蔵酒」や「生詰酒」という生酒も売られている。いったい何が“生”なのか。
これは火入れの回数の違いだ。「火入れ」とは、品質の劣化を防ぐために60〜65度くらいの温度で加熱殺菌する工程で、通常は製品として出荷する前に2回火入れをする。生酒は全く火入れしていないものを指す。対して生貯蔵酒や生詰酒は、貯蔵前か出荷前かのどちらかに1回火入れを行ったもので、いわば半生状態だ。
生酒はフレッシュな味や香りを味わえるが、デリケートなお酒。昔は夏場に生酒を味わうことは無理だったが、貯蔵・流通技術が発達した最近では、低温熟成された「夏の本生酒」が売り出されるようになった。
生酒に限らず、おいしいからといってついつい飲み過ぎないように!