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巨人の中大・沢村囲い込み作戦

 巨人が28日のドラフト会議で157キロ右腕の中大・沢村拓一を単独1位指名で獲得するために、一本釣り作戦を開始した。8日付けのスポーツ報知が1面で「巨人、沢村獲り」と報じたのが、その手始めだ。

 「沢村の意中の球団が巨人であることがわかった。他の11球団に指名された場合はメジャーか浪人も考えている」。スポーツ報知の記事のこの部分に巨人の狙いがにじみ出ている。グループのスポーツ紙を使って、沢村1位指名を検討している球団に手を引かせようと紙爆弾を投下、強烈なけん制球を投げているのだ。
 実は、スポーツ報知の報道前日には、日刊ゲンダイが巨人の沢村獲りを報じている。巨人OBの中大・高橋善正監督が評論家時代に在籍していたことのある夕刊紙だけに、信憑性のある記事だった。こちらは、巨人と友好関係にはないので、巨人の肩を持つことはないが、高橋監督の意向も沢村の巨人入りにあるのではないかという、裏読みはできる。

 これまで巨人のドラフト1位候補はベールに包まれていた。ロッテ、ヤクルトが1位指名を公言している人気ナンバーワンの早大・斎藤佑樹、同じく早大の実力派ナンバーワンの呼び声が高い大石達也、そして、中大の沢村、大学球界ビッグ3の中の誰かからという漠然とした情報が流れていただけだ。
 それが、ここへきて沢村一本に絞り込み、囲い込み作戦を急展開させている。早大・斎藤だけでなく、大石もオリックス、阪神、ソフトバンクなどが1位指名する動きを見せており、重複指名を避けられなくなっている。投手陣の崩壊でリーグ4連覇に失敗した巨人としては、即戦力投手の獲得は最大かつ急務の補強ポイントになっている。それだけに、単独指名できる即戦力投手を確実に獲得したいという切実な思いがある。ビッグ3の中では、沢村が一番一本釣りしやすい状況にある。
 巨人と中大には他球団が簡単に食い込めない強力なコネクションがあるからだ。高橋監督が巨人OBというだけに止まらない。アマ球界関係者はズバリこう言い切る。
 「今でも絶対的な力を持っている中大・宮井総監督の娘さんが元巨人スカウト部長の中大OBの末次さんの奥さんという、これ以上ない太いパイプがあるからね。阿部、亀井という中大出身の選手は、もちろんスカウト部長だった末次さんが獲得している。末次さんは今の中大の高橋監督とも仲も良い。囲い込みをやられたら、他球団は大苦戦するだろう」。

 巨人にとってさらに追い風になるのは、今季のセ・リーグ新人王確実のドラフト1位・長野久義の存在だ。日大時代に日本ハムに指名されたが、「巨人以外に行かない」と拒否して社会人のホンダ入り。今度はロッテに指名されたものの、「初志を貫徹したい」と再び入団拒否。巨人は単独1位指名で獲得して成功した実例がある。それだけに、沢村が「巨人以外には行きません」と言い出したら、第二の長野になる恐れがあり、他球団とすれば、及び腰にならざるを得ないだろう。
 巨人のシナリオ通りに沢村の一本釣りが成功するのか。勇気ある球団があえて沢村を1位指名してくるのか。10・28ドラフトの見所の一つになってきた。

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