競輪界には最上位のSS級に40歳の神山雄一郎(栃木)、43歳の鈴木誠(千葉)、遠沢健二(神奈川)、41歳の豊田知之(岡山)の4人がいる。神山は遅くても四日市GIIIで、700勝達成の偉業を成し遂げるだろう。鈴木、遠沢も番手を回るときの差し脚、豊田の中割りもまだまだ鋭い。
S1に目を向ければ在籍数は271名だから、9人に1人。40歳以上の選手は40名以上いるわけだ。ベテランたちがいかに頑張っているか、分かろうというもの。これに昨年の多失格でS2に落ちた山口幸二(岐阜)の40歳も入れなくなるまい。山口の競走得点は現在113点。今年は3千4百万も稼いでいる。
S1の最年長は「鉄人」といわれる伊藤公人(埼玉)の51歳だ。病気で一時は最下位のB級におちながら這い上がってきた根性は今も健在だ。7月の岸和田FI2日目には及川裕奨(岩手)のまくりを11秒5の追い込みで破り2車単2万2480円の大穴を出している。
ついで48歳の佐々木昭彦(佐賀)、46歳は弟の佐々木浩三、高橋光宏(群馬)、山根義弘(山口)となるが、いずれもつぼにはまった時の差し脚は健在だ。佐々木昭彦は防府FIでは小川勇介(福岡)の先行に離れたが、都合よく峠祐介(埼玉)が前でまくってくれて2着流れ込み。ど筋違いで2車単1万1290円の穴を出している。
一時はS2に下がって「昭彦もここまでか」と思われていたが、S1にカムバックしてからは「1場所に1回は連に絡んで」穴ファンを喜ばせている。
選手も40歳になると目標の若手先行が計算外の踏み出しをするとダッシュにつけきれなくなってくるが、千切れてもそれからのレースのしぶとさがある。
離れて番手が悪くなってもバックから追い上げて、直線ではインや中を狙うコースとりのうまさはまさに百戦錬磨の経験がものをいう。
「年をとるとダッシュは落ちるが、粘りはかわらない。耐久力のある筋肉を作るのは年齢に関係ない」といわれるが、競輪選手の40代は、脚力常に最高に保つトレーニングをしている。スピード練習よりも粘りのある脚を保つ練習を作るうまさと、番手をさばくテクニックは、さすがベテランである。
伊藤公人のところには他県からも、競りのテクニックを教授してもらうために、追い込み選手が訪ねてくるという。ハンドルさばきひとつで良い番手がキープできることは今も昔も変わらない。伊藤には55歳くらいままでS級で頑張って欲しい。