ケニア、南アフリカ、フランス、レバノン、ノルウェー、オランダ、ドイツの合作で、劇中で使われる言語は英語とスワヒリ語。なかなか、そんな映画に出会うことはありません。しかも同性愛が描かれているために本国ケニアでは上映禁止でしたが、監督のワヌリ・カヒウの熱心な活動の結果、限定公開に至り、チケット入手困難なセンセーションを巻き起こす結果に。カンヌ映画祭では史上初のケニア作品として「ある視点部門」で上映されました。
まず、映像のカラフルさに惚れました! これが今の時期の目と脳にいい栄養をくれます。主人公であるふたりのファッションはもちろん、建物の美しさはヨーロッパのカラフルさと一味違って、太陽によく似合います。壁の色、ドアの色、洗濯物、細かく言えばストローまで、すべてがアゲアゲポイント。静かに恋に落ちるケナとジキ。キスするまでの躊躇がたまらなく可愛くて、見ているこっちが、ふたりの頭を押さえてあげたくなるくらいです。
そして、何度かスクリーンに映し出されるふたりの横顔のアップが美しい。ボロボロの車の中だけが、彼女たちの“自分のままでいられる場所”。また、同性愛だけでもタブーなのに、ふたりが置かれている立場も辛い。それは、ふたりとも政治活動をする父親の娘であること。さまざまな壁があって、まわりに変な目で見られ、いろいろ言われ、そんな中、ふたりの気持ちはどうなるのか…。
恋はどんな形でも素晴らしいもの。ケニアが舞台だからか、少しカラッとしてます。でも、彼女たちの心中を考えると複雑。恋愛は自由なはず。恋愛をして祝福されたい。誰だってそう思う。それなのに…。
ケナを演じたサマンサ・ムガシアのボーイッシュなルックスに虜になりました。私生活ではバンドやモデル、ヴィジュアルアーティストとして活躍。そしてジキを演じたシェイラ・ムニヴァは太陽のように輝いていて、インスタでもファッショニスタとして完璧。彼女は大学時代にニュースキャスターを目指しましたが、途中で映画制作に方向を変えました。
クリエイティブなふたりだからこそ生まれるケミストリー。この作品との出会いを大切にしたい!
画像提供元:(c)Big World Cinema.
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■ラフィキ:ふたりの夢
監督/ワヌリ・カヒウ 出演/サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ、ジミ・ガツ、ニニ・ワシェラ 配給/サンリス 11月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
■看護師を目指しているケナ(サマンサ・ムガシア)は、母親と一緒にナイロビで暮らしてた。母と離婚した父親とは離れて暮らしているが、国会議員に立候補した父を応援している。古いしきたりにとらわれた周囲の人たちに満たされない想いを抱えていたケナは、ある日、父の対立候補の娘で自由奔放なジキ(シェイラ・ムニヴァ)と出会う。互いに強く惹かれた2人だったが、同性愛が違法であるケニアでは彼女たちの恋は命懸けだった。
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LiLiCo:映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS「大様のブランチ」「水曜プレミア」、CX「ノンストップ」などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。