イチローはFAとなっていたが、12月14日(日本時間15日未明)、ヤンキースと合意に達した。条件は2年総額1300万ドル(約10億8500万円)とみられ、今季年俸1800万ドル(約14億4000万円=推定)から約3分の1となる大幅減俸を、イチローがのんだ恰好だ。
決め手となったのは、カネではなく、ヤンキースへの愛着だった。今季途中の7月にマリナーズから移籍したイチローは、ア・リーグ東地区の優勝を経験し、プレーオフに進出。タイガースとのリーグ優勝決定シリーズには敗れたが、「ボクがアメリカに来て理想としていたものがここにある。ここでしか味わえないものは確実に存在する」とコメント。ヤンキースを気に入っていたイチローは、かねて残留を希望していた。
しかし、ヤンキースは他の選手の残留交渉を優先したため、イチローとの本格交渉に入るまでには時間がかかった。当初は単年500万ドル(約4億1700万円)程度の提示とみられていたが、他球団の動向がイチローに有利にはたらいた。
フィリーズが2年1400万ドル、ジャイアンツが2年1500万ドルで、イチローにオファー。ヤンキースは提示額を見直さざるを得なくなり、年俸も当初よりアップ、単年は複数年に変わった。とはいえ、ヤンキースの条件は他球団の提示額を下回っており、あくまでもカネよりヤンキース愛を貫いた。
来年10月で40歳となるイチローと複数年契約を結ぶには、ヤンキース側にリスクもある。だが、他球団のオファー内容、そしてグッズ売り上げチーム2位で営業部門からのラブコールも効果を上げ、2年契約で落着した。
メジャー通算3000本安打まで、あと394本。ここ2年はシーズン200本安打を割り込んではいるが、14年シーズンまでヤンキースでのプレーが保障されたことで、大記録の達成も見えてきた。
(落合一郎)