日本腎臓学会は、死に繋がる慢性腎不全まで進まないよう、糖尿病などの持病を持つ人などに早めの受診を勧めている。
神奈川県川崎市の男性(58)は、「CKDの疑いがある」とかかりつけの病院から指摘され、同市高津区の腎臓が専門の今井圓佑氏が院長を務めるクリニックを受診に訪れたという。
「腎臓の病気は、かなり重くなるまで自覚症状がないため、ある日突然、透析が必要な末期の腎不全とわかることもある」と、今井院長。
CKDは、そんなことがないようにと、10年ほど前に米国で提案され、日本国内でも広がってきた診断法だという。
CKDかどうかは、大まかにいうと、腎機能を示す糸球体濾過量(GFR)と呼ばれる数値で診る。健康診断などで測る「血清クレアチニン」という値と性別、年齢から計算できる。
数値が大きいほど正常に近く、小さいほど腎不全に近い。60未満の数値の状態が3カ月以上続くなどすると、CKDと判断される。前出の男性は50。日本腎学会のガイドでは「軽度〜中程度」に当たるレベルだった。
男性に自覚症状がなかったが、検査を受けると血糖値が高めで、最高血圧が160、最低血圧が105。「このままでは糖尿病になる可能性が高い。腎機能の低下にも注意が必要」との診断が下された。糖尿病患者は、全身に動脈硬化が進み、細かい血管がたくさんある腎臓も痛みやすく、CDKの進行も早いからだという。
今井院長は「尿蛋白がわずかに見つかった段階で腎臓が大きなダメージを受けていることが多い」と話す。診察を受けた男性は、朝晩に計2種の降圧薬を飲み、夜は食べる量を減らした結果、最高血圧が130に低下し、GFRは50〜60に回復したという。
「若い人は進行が早いので、早めに専門医を受診してほしい。進行する前に健診結果などに注目し、危険度を評価することが大切。もちろん、尿のチェックも努力してください。自分の体なのですから、事前の予防策に繋がることとして認識してください」(今井院長)
また、一般の尿検査では「見落としのリスクもある」といわれるが、現在の保険制度では、まずこれを受けるのが基本だ。
「その上で“陽性”なら、降圧剤のACE阻害薬など受容体拮抗薬で治療を受けてリスク因子を潰すこと。これらの薬は、腎臓の保護効果が認められているのです」(医療関係者)
また当然、食生活なども考えなければならない。
「腎臓病の進行を防ぐには、“減塩”や“禁煙”とともに、お酒を飲み過ぎないことです。それに肥満の解消(BMI25未満)に努めること。生活習慣の改善は大切なことなんです」(管理栄養士・林康子氏)
尿のチェックと生活習慣の改善で、腎臓へのいたわりを心掛けよう。