誰が考えても、景気は減速している。その最大の根拠となっているのが、5月13日に発表された3月の景気動向指数が、「悪化を示している」と6年2カ月ぶりに景気後退を宣言したからだ。確かに景気動向指数の一つで景気の現状を示す一致指数は、昨年10月の103・9から、今年3月の99・6へと、4.3ポイント下がっており、この判断自体は妥当なものだろう。
ただ、景気動向指数に記載される景気判断自体は、恣意的なものだ。例えば、’14年3月の一致指数は、105・6だったが、1年後には99・4と、6.2ポイントも下落している。今回よりもずっと大きな落ち込みをしたのだから、明らかに景気後退に陥ったのだが、この時は景気後退認定がされなかった。原因が消費税のため、消費税を8%に引き上げたことで景気が悪化したことを政府は認めるわけにはいかなかったのだ。
つまり今年3月分の景気動向指数で、政府があえて景気後退を認めたのは、景気後退を宣言するための観測気球を上げたからではないか。そして、5月の月例経済報告で景気後退を認めなかったのは、6月下旬頃に発表される6月の月例経済報告まで、景気後退認定を先送りするためだろう。先送りの目的は、もちろん衆参同日選挙だ。景気後退を防ぐための消費税の増税凍結と景気対策としての幼保無償化の政策を掲げて、国民の信を問うのだ。
ただ、世間で解散風が吹き荒れるなかで、総理に近い人ほど、増税凍結や解散を否定しているというのが現状だ。例えば、自民党の甘利明選対委員長や政治評論家の田崎史郎氏などがその代表である。彼らの論拠は、「総理が否定している」というものだ。しかし、昔から公定歩合と解散については、総理は嘘を言っても構わないと言われてきた。解散の時期については、仲間も騙すのが常識なのだ。
客観的にみれば、増税凍結は避けられない。IMFは、5月23日に米中貿易戦争が激化した場合、世界経済の成長率が0.3%押し下げられる試算を発表した。4月の見通しでは、今年の世界経済の成長率を3.3%と見込んでいたから、3.0%まで下がる可能性がある。リーマンショックの翌年から5年間の成長率は3.3%だったから、すでに世界はリーマンショックを超える経済危機に陥っている。日本経済を守るために、増税の凍結とその信を問う総選挙は不可欠だ。
それだけではない。衆参同日選挙の方が自民党に有利になることは、過去の選挙の実績からも明らかだ。特に今回は、野党の間で衆議院選挙の候補者調整が進んでいないので、ますます自民党に有利になる。
さらに、トランプ大統領は、5月24日のツイッターで安倍総理との日米貿易交渉の成果に関して「大部分は7月の選挙後まで待つ」と投稿した際に、「選挙」を「elections」と複数形で表記した。これは、安倍総理から、「衆参同日選挙になるので、結果の公表は、それまで待ってほしい」という要請があったからではないかとの憶測を呼んでいる。状況証拠は、どう考えても増税凍結、衆参同日選挙の可能性が高いことを示しているのだ。