そもそも「鼻水」は、鼻から出る流動性、あるいは半流動性の液体のことを言い、呼び名も鼻汁(はなじる、びじゅう)とも言う。
通常の鼻水は、鼻腔内の鼻腺などから排出された粘液や血管から浸入した液の混合物だ。鼻から吸った空気に適度な湿り気を与えたり、気道の粘膜を病原菌から保護するために分泌され、液が鼻から溢れ出る。
また、鼻水は鼻の粘膜を潤すために常に一定量が分泌されている。異物が体の中に入り込まないようにしたり、乾いた空気が気管支にまで侵入しないようにするため、加湿や加温をして粘膜を保護する役割を果たしているのだ。
それでもウイルスや細菌など異物が入り込んでしまった場合は、それを洗い流して排出しようと鼻水の分泌を増やして活性化する。風邪をひいたときに鼻水が出るのはそのためで、花粉症の場合も花粉に対する過剰な“防衛反応”によって鼻水の量が多くなるといわれる。
都立多摩総合医療センター耳鼻咽喉科の担当医はこう説明する。
「風邪の症状であるくしゃみ、鼻水、咳、発熱、下痢、嘔吐も、すべて免疫による反応といえます。例えば、鼻粘膜に付いたウイルスを追い出そうとする反応が、くしゃみ、鼻水で、胃や腸からウイルスを追い出そうとする反応が下痢、嘔吐。さらに、発熱も免疫反応の一つです。ウイルスは体温が37℃前後だと活発に活動しますが、熱に弱いためさらに上昇すると、増殖が抑えられる。ですから、風邪のとき市販薬などで無理に熱を下げるのは良くないと言う専門家もいます。免疫力が高い人は、ウイルスが入り込んだとしても、くしゃみや鼻水で追い出すことができるため、比較的症状が軽くて済み、症状すら出ない場合もあります。逆に、免疫力が弱い人はさまざまな症状が出てしまいます」
また、都内で総合医療クリニックを運営する久富茂樹院長はこんな見方をする。
「俗に言う“鼻風邪”は、鼻の粘膜が低温の空気や乾燥などによって炎症を起こしたもので、急性鼻炎の一つといえます。多くは、空気の乾燥のために鼻の粘膜が乾いてしまい、寒さで線毛運動が停止した際、ウイルスに感染することで引き起こされます。また、刺激性のガスやほこりなども急性鼻炎の原因になります。鼻の粘膜は体の外にあり、外気に触れやすいこともあって、体に何らかの不調があると最初に症状が現れやすい。そのため、鼻水の量が増えている場合は体調不良のサインだと考えていいでしょう」