チョコといえば「甘い」、「女性が好む食べ物」という印象が強い。そんなチョコがいま、変化を遂げている。中高年を悩ませる生活習慣病や老化の予防のために、積極的に食べたい食材の筆頭になりつつあるのだ。
注目すべきは、現在、コンビニでも購入できる「高カカオチョコ」である。
「高カカオチョコとは、カカオの含有量が70%を超えるチョコのこと。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防・改善に有効です」と教えてくれるのは、『チョコは糖尿病によく効く、ヘモグロビンA1cがこんなに下がった』(主婦の友インフォス)の著者で、栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅先生。
一般的なチョコは、カカオの種を発酵させて焙煎した「カカオマス」に、砂糖や乳脂肪を加えて食べやすくしたもの。一方の高カカオチョコは、乳脂肪を入れず、砂糖の量を減らして、カカオの含有量を増やしたもの。通常のチョコに比べ、糖質量が圧倒的に少なく、「カカオ・ポリフェノール」や不溶性食物繊維「リグニン」の量が多いのが特徴だ。
そして、このカカオ・ポリフェノールこそが、「高い健康効果」の立役者である。
「植物の多くは、ポリフェノールを含んでいます。中でもカカオのポリフェノールは飛び抜けて高く、人の体に有効であることが分かっています」(栗原先生)
高カカオチョコには、ポリフェノールを多く含むことで知られる赤ワインの約15倍ものポリフェノールが含まれているという。
「ポリフェノールには、血糖値を下げる効果が認められています。また、血糖値をコントロールするホルモン・インスリンの働きを改善するので、少量でもインスリンの効きが強まります。結果、インスリンの働きが不十分なことで血中の糖が増えすぎてしまう“糖尿病”の予防や改善に有効なのです」(栗原先生)
さらに、ポリフェノールは血管を拡張させる作用を持ち、「高血圧の改善」にも働く。加えて、体内の活性酸素を減らし、悪玉コレステロールの発生を抑制。コレステロール値を調えることで「脂質異常症を予防・改善」し、血流をよくし、血管をしなやかにすることで「動脈硬化を予防」する。
驚くべきことにポリフェノールは、認知症の予防にも効果を発揮する。歳を重ねると脳の認知能力が少しずつ低下するが、これは脳の栄養分といわれるたんぱく質の一種「BDNF」が不足するためとされ、高カカオチョコの摂取でこの「BDNF」を増やすことができるというのだ。これにより脳が活性化し、認知機能を促進・維持することが分かっている。
★便通をよくし大腸がんも予防
高カカオチョコに含まれる不溶性食物繊維のリグニンもまた、食事の前に摂取すると、糖質の吸収をゆるやかにし、食後血糖値の急上昇を抑えるという。100g中の食物繊維は、食物繊維が多いといわれる煮小豆が11・8g、おからが11・5gなのに対して高カカオチョコは12gとほぼ同等の量が含まれている。
また、カカオに含まれる難消化性たんぱく質のカカオ・プロテインは、大腸の腸内環境を改善し、便通をよくするのに加え、大腸がんの予防にも役立つという。
かなりの健康効果が期待できる高カカオチョコレート。健康診断の結果、医師に指導された「塩分を控える」「アルコールを減らす」「ダイエットをする」といったことと同様の効果が、高カカオチョコレートを食べるだけで得られるのだ。
チョコを健康に活かすためのコツは、3つある。
「1つめは、カカオ含有量が70%以上で乳成分や砂糖を控えた“高カカオチョコ”を選ぶこと。
2つめは、1日25gずつを、複数回に分けて食べること。ポリフェノールは体内にとどめておくことができないので、5gくらいずつを5回に分けて食べるのが理想です。市販の“高カカオチョコ”はおよそ5gずつの個包装になっているので、1枚ずつ食べればよいので便利です。
3つめは、食べるタイミングを“食前”にすること。その理由は、食事の前に食べると、ポリフェノールが血糖値を下げるのに加え、豊富に含まれる食物繊維が糖の吸収を緩やかにし、Wの効果で食後血糖値の急上昇を抑えるためです。その結果、血中中性脂肪値の改善や脂肪の蓄積予防にもつながります」(栗原先生)
イタリアで行われた実験では、1日25gの高カカオチョコを数回に分けて摂取し、3カ月間食べ続けたところ、肝臓の健康度を表すALT、γ−GTP、さらにコレステロールの数値が改善。その後も高カカオチョコの摂取を続けたところ、血糖値をコントロールするインスリンの分泌がスムーズになり、脂肪が燃焼し、血圧も安定、便通も改善したと報告されている。
また、栗原クリニック東京・日本橋に通う男性19名、女性12名が高カカオチョコの摂取を続けたところ、3カ月後には全員のALT、γ−GTP、コレステロールの数値が改善したという。
高カカオチョコの摂取は、次の健康診断までにぜひ挑戦したい簡単健康術である。
◎高カカオチョコがもたらす効果
・_血糖値を下げて糖尿病を予防
・_活性酸素を減らして動脈硬化を予防
・_糖の吸収を緩やかにして脂肪を減らす
・_血圧を安定させて高血圧を予防・改善
・_脳を活性化し認知症を予防
・_腸内環境を改善して大腸がんを予防
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監修/栗原 毅先生
栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。前慶應義塾大学特任教授、前東京女子医科大学教授。主な著書に『チョコは糖尿病によく効く、ヘモグロビンA1cがこんなに下がった』(主婦の友インフォス)など多数。