そんな京都は、かつて平安京として日本の首都を担っていたが、その頃から現在に至るまで碁盤の目のような道路配置の都市計画が実施されている。中国の長安城にならって造られた都市は、細い路地や一方通行も多いが、その街並みの中で気付くことがある。
民家の角に大きな石が置かれている光景だ。腰を降ろして座るのにもちょうどいい大きさのこの石、てっきり休憩用かと思っていたら大間違いで、もちろんオブジェでもない。正解は何なのか?
この土地は、直角に曲がるクランク状の細い路地だらけで、そこを結構なスピードで走り抜けていく車が多い。そんな車との接触から、壁や石垣などを守るために置かれているのが、民家の角にある大きな石で“いけず石”と呼ばれるもの。「いけず」とは“意地悪”を意味し、マナーの悪いドライバーから家を守る京都人ならではの対策である。
それにしても、景観を意識してなのか、石を選択するところがいかにも京都らしい。これが都内であれば、石ではなく赤い三角コーンが置かれてしまうはずだが、それを使うことなく、京都の風情を壊さない手法を取っているところはさすがである!
価値など無いに等しいはずのいけず石だが、歴史ある京都の路地に置かれると、妙にマッチしてしまうのだから不思議である。