「浅村栄斗、菊池雄星と投打の主軸がチームを去り、百戦錬磨の好捕手・炭谷銀仁朗までいなくなりました。人的補償したとはいえ、戦力ダウンは否めません」(スポーツ紙記者)
果たして、本当にそうだろうか。西武はFA流出選手が最も多いチームでもある。ポスティングシステムによる米球界挑戦を含めて言えば、松坂大輔、松井稼頭央、清原和博、工藤公康らチームの看板選手を失っても、はい上がってきた。前年よりも順位を上げたシーズンもあるくらいだ。
こうした西武のしぶとさをさして、キャンプを取材したプロ野球解説者はこう言った。
「例年と変わらないというか…。浅村、炭谷の残留交渉に失敗した直後は動揺していましたが、新しいチームとしてスタートを切っていました。『新戦力』の評判もいい」
「新戦力」とは、ドラフト1位ルーキーの松本航(22=日体大)のことだ。
首都大学リーグで、東海大時代の菅野智之以来となる「通算30勝・300奪三振」をマークした強者である。エース・菊池がいなくなったことで「開幕投手でもいい」の声も上がるほど、調整は順調だった。こんなふうに、新しい選手がすぐに出てくるのがしぶとさの一因でもあるが、評判の良い投手がもう1人いた。
巨人から人的補償でやってきた内海哲也である。4月には37歳を迎える大ベテランだが、西武は計算の立つ左投手が少ない。辻発彦監督も先発ローテーション入りを期待していたのは間違いない。
「内海は技巧派。近年、技巧派の左腕はパ・リーグにいなくなったので、内海の西武入りは面白いのではないかと予想する声もありました」(スポーツ紙記者)
内海は若い西武投手陣ともなじんでおり、巨人時代よりも登板機会が増えるのでないかとも期待されていた。本人が明るく、やる気を見せているのはそのためだろう。
「松本は快速球が武器の好右腕です。松本の名前がクローズアップされるのは、オープン戦が盛んとなる3月に入ってからになりそう。松本に注目が集まり、その裏で内海が開幕戦に標準を合わせてきたら面白いことになるかも」(球界関係者)
もっとも、ペナントレース公式戦は予告先発制。「完全に相手チームの裏をかいた」とはならないだろう。ただ、新人の松本、セ・リーグの巨人から移籍してきた内海に関するデータは、パ・リーグ各球団には少ない。松本、内海のどちらが開幕戦に来ても、相手チームは嫌な印象を抱くことだろう。
現有戦力の多和田、今井、榎田らが順調に仕上がれば、ソフトバンク、日本ハムなど上位候補と互角以上に戦える。昨年覇者の西武が順位を大きく落とすことはなさそうだが、他選手の話が聞こえてこないのは、ちょっと気になる…。
(スポーツライター・飯山満)