渡し船を利用しなければ、たどり着けない場所ではあるものの、船便の往き来も頻繁で気軽に渡れるため、今回も正午前に堤防に渡るというのんびりな釣行です。
そして、狙いの魚は冬に向かって食味が増すカワハギ…のはずだったのですが、ポツポツ程度に掛かる本命に対して、ホンベラやキュウセンは入れ食い状態…。速い潮流が通ることで有名な明石海峡に面した釣り場ゆえ、掛かる魚は小型でも引きが強く、なかなかに楽しめます。
そのような激流の中で、堤防直下に着いているであろうカワハギを狙っていましたが、やや沖の水深3メートルほどの層に何やら魚がチラホラ見え始めました。あれは…メジナ(関西では“グレ”と呼ばれる)ですかな。どうやら潮の流れの上手で竿を出している釣り人が寄せエサを撒いているようで、その影響で流れの下手に魚が浮いてきているようです。
これは、オコボレを狙った「横取り四十萬作戦」のチャ〜ンス! って、令和の時代にこのフレーズを覚えている方はいるのでしょうか?
それはさておき、そもそもワタクシはカワハギ狙い一択で来ておりまして、グレを狙うような専門的な道具は持ち合わせておりません。グレを狙う場合は、ウキを潮の流れに乗せて狙う「ウキフカセ」という釣り方がポピュラーなのですが、これがなかなか技術が必要な釣りでして、釣りの技術に不安があるワタクシにはかなりの難題なのです。さて、どうしたものか…。さぁ〜みんなで考えよう!?
★試行錯誤奏功!ただ再現性ナシ
あいにくながら、グレ狙いの寄せエサに使われるオキアミやアミエビは持ち合わせておりません。となれば、手持ちの虫エサで挑むのみ!
幸い小型のグレは、ジャリメも好むのでエサは問題ないハズです。ウキ釣り用の小物も当然持っていませんから、手持ちの胴つき仕掛けに手を加えて、エサが中層を漂うようにします。
果たして、こんな子供騙し&付け焼き刃な仕掛けで釣れるのかしら…。
魚群から離れた流れの上手に仕掛けを投げ入れ、流れと同じ速度で歩きながら仕掛けを流します。おお、実際やってみると流れが結構速いですな。
「さすがは明石海峡!」という激流を体感していたところ、いきなり「ギュギュンッ!」と竿先が絞り込まれました。「何が掛かっているんでしょ〜か!?」。
そう期待しつつ上げてくると、掛かっていたのはカワハギ。う〜ん、うれしいけど今じゃないんだよ…。
気を取り直して再び投入し、流れに合わせてテクテク。またしても「ギュギュン!」と竿先が絞り込まれます。今度はやけに引きが鋭くて力強いけど…、「何が掛かっているんでしょ〜か!?」。
「キュンキュン」と鋭い手応えで上がってきたのは、グレです。小さいながらも肥えていて、何ともウマそう。当然、お土産としてキープすべく、しっかり血抜きを施してからクーラーボックスへと仕舞いました。
狙っていたとはいえ、こんな方法で釣れたことにやや拍子抜けですが、調子に乗って追釣を狙います。ただ、世の中、そんなに甘くはなく、その後はベラ類のオンパレード…。激流の中で型のよいアオベラが混じってくるので、強い引きが楽しめるのですが、もうキミたちはいいのだよ…。
結局、グレは1尾のみで終了。まあ、思い付きの「横取り四十萬作戦」ですから、そうは問屋が卸さないというヤツですな。
もっとも、今シーズンの垂水一文字は、殊更にグレの湧きがよいようで、グレ狙いの釣り人は30尾、40尾とまとまった釣果が出ています。そんな状況ゆえ、気まぐれな1尾がうっかりハリに掛かってくれたのかもしれません。
★臭みはなく脂&甘味十二分!
持ち帰ったグレは、姿造りで賞味です。磯魚特有のクセは皆無で、淡白な白身にうっすらと脂乗りと甘さが感じられて、実に美味です。ちなみに、「グレ=磯臭い」と評されることもありますが、今回のように血抜きと丁寧な内臓除去を徹底すれば、臭いが気になることはありません。コレ、重要です!
ウマい刺身に合わせるのは、『白鶴 純米大吟醸 山田錦』。コクがありながら後味スッキリで、サラリと喉を通っていきます。
本命のカワハギに加えてアオベラやホンベラ、さらには「横取り四十萬」でグレまで確保でき、垂水一文字への釣行は大満足のうちに終了。往年の名番組「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」の動画を見つつ、愉快な晩酌を楽しみました
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。