初級レベルの鉄ちゃんには、「たま」の説明が若干必要だろう。三毛猫のたまは和歌山電鉄・貴志川線の貴志駅駅長を務める。もとは同駅の売店「小山商店」の飼い猫だったが、駅長や利用客らにかわいがられマスコット的存在になった。テレビや雑誌などでもさかんに取り上げられている。
新作DVDは昨年11月発売に続く第2弾。宣伝担当者によると、ファーストDVD「たまはスーパー駅長〜いちごの風にのって〜」は愛猫家の関心も集め、同駅売店だけで現在も月100枚をセールスしているという。菓子など関連グッズも大人気。2007年1月にたまが駅長に就任して以降、1日あたりの乗降客が約700人にすぎなかった同駅は観光客であふれ、これまで約11億円の経済波及効果があったというからすごい。
関係筋から入手した情報によると、新作の内容は今年3月から運行されている「たま電車」の完全ドキュメンタリーという。なかでもマニアが飛び付きそうなのが、本来は“オマケ”にすぎない特典映像。始発・和歌山駅から終点・貴志駅まで、運転席から見た風景が完全収録されている。つまり、電車でGO!の感覚で楽しめるわけだ。
宣伝担当者は「マニアに喜んでいただけるよう、運転席からワンシーン・ワンカットの長回しにしました。あえて加工をせず、駅名を入れる程度にとどめています。ここまで装飾を剥いだ映像はなかなかないし、それほど絶景があるわけでもありませんが、リアルな旅気分が味わえます。かなりストイックです」と猛プッシュする。
たま電車はヘッド部分にヒゲが描かれ、ボディー側面では愛らしいたまが何匹も飛び跳ねる。注目の工業デザイナー・水戸岡鋭治氏がデザインしたもので、内装も猫の肉球模様がついたソファーをあしらうなど凝ったつくり。中吊り広告はすべてたまのイラストだ。
DVD本編ではたまの勤務ぶりと併せて車内を余すことなく紹介している。税込み2940円。ちなみにサブタイトルにある「いちご」は地域の名産品だ。
(写真=「たまとたま電車」の特典映像に収録されている運転席からの風景。のどかで旅心を誘う)