「今年、職場で人事異動があり、営業職となりました。慣れない業務に悪戦苦闘の日々。でも、僕は将来独立して、起業する夢があり、これも経験だとして懸命に取り組んでいたんですね。
そんなある日、上司が飲みに誘ってくれました。労いの言葉を掛けてもらい、とても嬉しかったんです。そこで、ある言葉を贈られました。“努力した者がすべて報われるとは限らないけど、成功した者は皆すべからく努力してる”と。これは、あるスポーツ漫画の名言らしく、今の僕にピッタリの言葉だと言われ、すごく感動しました」
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彼は、熱い言葉を贈ってくれた上司を慕うようになった。それからも、上司はいろいろ声を掛けてくれたが、すんなり受け入れられなくなっていく…。
「上司は、たびたび僕にいろんな言葉を贈ってくれました。ただ、どれも人の言葉なんですよね。“この人はこう言ってる”と前置きして言うんです。僕としては、上司本人の心からの声を聞きたかった…。
ある時、なかなか契約が取れずに塞ぎ込んでいる時期がありました。そこで、上司の前でつい、“辞めたいな…”と愚痴をこぼしてしまいました。すぐに後悔しました。というのも、上司が、“諦めたらそこで試合終了だよ”と言ってきたのです。やっぱりそれか…と思いましたよね。その言葉は僕も知ってるし…。いい言葉だけど、むしろガッカリ。とにかくもう、上司に何を言われても響かなくなってしまいました」
上司もきっと、偉そうなことを言いたくないのだろう。だから名言を引用して、部下に発破をかけようとしたのかもしれない。しかし、部下としては、経験を踏まえた上司の心からの言葉が聞きたかった。上手く噛み合わない、歯痒い状況である。
写真・my_southborough