前日まで「6勝5敗」の阿炎はこの日、同じく「6勝5敗」の平幕・宇良と対戦。立ち合い、宇良は頭を下げながら前に出て懐に潜り込もうとしたが、阿炎は宇良の首に右手でかけながら左方向に変化。体勢を崩した宇良は首を押さえ込まれたまま地面にたたかれた。
取組時間約1秒で宇良を下した阿炎だったが、取組後は場内から「あ~」とため息が上がり、阿炎が取組後の一礼を終え土俵を降りた後もさほど拍手・声援は上がらず。NHK中継の実況アナウンサーは「熱戦を期待したファンからは少しため息も聞かれました」と伝え、正面解説の舞の海秀平氏(元小結)も「こういう相撲内容だと、自然に拍手も少なくなりますよね」と観客の心情を察していた。
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“注文相撲”を見せたこの日の阿炎に対し、ネット上には「立ち合いぶつからずに逃げてて失望した」、「勝ちは勝ちだが、全く中身のない相撲内容だったな」、「体格で圧倒してる(阿炎は身長187センチ・体重159キロ、宇良は175センチ・148キロ)力士相手に変化なんてみっともないと思わないのか」、「安易な変化で目先の1勝掴んでも今後にはつながらない」といった批判が寄せられた。
ひんしゅくを買っている阿炎の変化だが、一部からは「前回対戦の仕返しだったのか?」という推測のコメントも上がっている。前回阿炎と宇良が対戦したのは2022年7月場所2日目だが、この相撲では宇良が立ち合い直後に右に大きく変化。両手を前に出しながら踏み込んだ阿炎はバランスを崩し、そのまま成すすべなく押し出され敗れた。ファンの間ではこの一番が今回の変化の背景にあったのではという見方も多い。
阿炎は長いリーチを活かした突き押し相撲が持ち味の力士で、先場所は大関・貴景勝、平幕・高安と三つ巴の優勝決定戦を制して自身初優勝(12勝3敗)を飾っている。次代の大関候補の一人としても期待されているだけに、今回の“注文相撲”にはがっかりしたファンも少なからずいたようだ。
宇良を下して今場所の勝ち越しにリーチをかけた阿炎だが、13日目の平幕・琴勝峰戦は立ち合い強くぶつかるも相手を攻めきれないまま突き落としで敗戦。勝ち越しは14日目以降にお預けとなっている。
文 / 柴田雅人