5年間務めたラミレス監督から三浦大輔監督に指揮官が代わり、昨年主にファームにいた阪口は春季キャンプから一軍に抜擢。オープン戦でもアピールを続け、開幕ローテーションの6枠目をルーキー・入江大生と争っていたが、結果的には敗れた形となりファーム調整を続けていた。
しかし、開幕3戦目の先発だった平良拳太郎が右肘の張りのため登録抹消され、思わぬ形で回ってきた登板。前日は「気負うことなく全力で腕を振るだけ」とコメントしていたが、「朝起きてから僕自身も勝っていない、チームも勝っていない。少なからず緊張してました」とプレッシャーを感じながらも、5回無失点と最高の結果を出した。マウンドをリリーフ陣に託した後、「試合が終わるまで緊張を感じていた」とし、ベンチに戻ってくる先輩たちには「ナイスピッチング!ナイス粘り!」と声を掛け続け、最後まで戦った結果、嬉しいプロ初勝利を手にした。
三浦監督も5回のピンチには「今日だけではない。今後のことを考えても乗り越えないと」と交代はせず、阪口も見事に応えた。「昨年ファームでいいピッチングをし、日に日に成長していった。オープン戦でもいいピッチングをしていたが、ファームスタートとなってもしっかり調整してくれた。阪口にとっても本当にいい1勝」と目を細めた。
ウイニングボールは「女手一つで3兄弟を育てて頂いた恩返し。1勝目のボールは母にプレゼントしたいと思っていた」と、この日も兄と共に観戦に来ていた最愛の母に贈ると宣言。
プライベートでもピッチングでも“孝行息子”ぶりを発揮した阪口皓亮。自身&三浦監督&DeNA10周年イヤーと、初めて尽くしの1勝を掴んだ右腕の爽やかな笑顔が、重苦しい横浜の空気を一挙に変えて見せた。
取材・文・写真 / 萩原孝弘