「初日からの休場力士は近年最多の67人に及びました。3日目の15日には大関経験者で前頭11枚目、36歳で現役関取最年長の琴奨菊も休場となり、館内には寂しい空気が漂っています」(担当記者)
そんな場所で熱い視線を浴びているのが、新入幕の豊昇龍(21=立浪部屋)だ。数々のトラブルを起こして引退した第68代横綱、あの朝青龍の甥っ子である。 「もともと豊昇龍は小さいころからレスリングに没頭し、選手として日本の高校に留学していたのです。ところが、高校1年のときに、両国国技館で大相撲を観戦。『自分も叔父さんのような横綱になりたい』と方針転換し、高校卒業と同時に立浪部屋に入門しています」(同・記者)
豊昇龍は、負けん気むき出しだった朝青龍によく似た風貌で、足腰のよさも叔父さん譲り。入門から2年半、14場所かかっての新入幕は、11場所で入幕した朝青龍には及ばなかったものの、早い部類の出世と言えるだろう。 「常に叔父さんの影を追っているので、もっと早く上がりたかったのでは」(師匠の立浪親方=元小結旭豊)
今場所の目標は、朝青龍が新入幕の場所で上げた9勝(6敗)超えの2ケタ勝利。4日目を終えて2勝2敗と、いきりなりの窮地だが、場所前に「叔父さんは本当にすごい人。褒めてもらえるように頑張ります」と、ヤル気まんまんだっただけに、巻き返しに期待したいところ。そんな甥っ子の入門時に相談を受けた朝青龍は、こう答えたという。 「強くなりたい? だったら、親方の言うことを聞きなさい」
自分は親方の言うことなど全く聞かない問題児だったくせに、真面目な顔でアドバイスしたというから微笑ましい話だ。
それにしても、白鵬、鶴竜の両横綱に陰りが見え始めたと思ったら、先場所は照ノ富士が復活優勝し、今場所は朝青龍のDNAを持った若手が出現。大相撲界は、今後も“モンゴル相撲日本場所”が続きそうである。