そのほか、テレビの表舞台に出られないため、活動の場をネット空間に見出した雨上がり決死隊の宮迫博之や、TKOの木下隆行などがいる。また、お笑い第7世代をリードする霜降り明星やEXITもYouTubeチャンネルを開設している。まさに、芸人YouTuberの群雄割拠といったところであろう。
こうしたブーム到来前にYouTubeを始め、爆死してしまった芸人たちもいる。
ギター侍ネタで、『エンタの神様』(日本テレビ系)でブレークした波田陽区は、2012年2月からYouTubeへの動画投稿を始める。かなり早い段階で手を付けていたと言えるだろう。
内容は「こんなところにフェニックス」と題し、派手な不死鳥に扮した波田が、街の至るところに出現するもの。波田は事務所の先輩芸人であるネプチューンの名倉潤にした相談で、「派手に何かをやれば」とアドバイスを受け、それを勘違いしフェニックスをやった。実際は「ギター侍は地味なので、派手な要素を入れてみては」といった内容であったようだ。案の定、動画はまったく話題にならず、現在の波田は九州地区でローカルタレントとして細々と活動している。
「謎かけ」でブレークした元Wコロンのねづっちも、2014年11月に「ねづっちチャンネル」を開設。こちらでも「謎かけ」動画をアップロードし続けた。コンパクトに見られる動画として人気を集めそうなものだが、視聴回数は伸びなかった。さらに、業者を通して運営していたため、約1年半の間に約900本制作した「謎かけ動画」の取り分は1800円であり、1本あたり2円と微々たるものだった。
浅草キッドの水道橋博士も、2018年3月に「博士の異常なYouTube」を始めるも、今や忘れされた存在となってしまった。博士は1997年にオフィシャルホームページを開設し、ブログ日記を芸能界でもっとも早く始めた一人である。だが、YouTube動画は、編集の技巧はあるものの、内輪のファン向けの内容にとどまるものだった。ビートたけしの独立騒動では、「たけし軍団一同」の声明を動画で発表するなど、速報的な活用も行ったが、それほど話題にならなかった。
人気YouTuberたちの活躍を見てもわかる通り、YouTubeチャンネルは芸能人だからという知名度だけで生き残れる世界ではない。殆どの人間が挫折する厳しい世界なのだ。