また、同月8日には力士を含む複数の日本相撲協会員が新型コロナに感染した疑いがあることや、そのうちの1人が検査入院していることが判明。もし感染者が出たとなれば、5月場所が中止に傾くことは避けられないだろう。
大相撲の本場所中止は、八百長問題の影響で中止された2011年3月場所が最後。もしそれ以来の中止となれば、各力士の調整、モチベーションに悪影響がもたらされる可能性は高い。ただ、中には5月場所の中止が“不幸中の幸い”となりそうな力士もいる。
35歳の横綱・白鵬は、「15勝0敗」で賜杯を手にした2019年3月場所から1場所ごとに出場と休場(途中休場含む)を繰り返すなど、2場所続けて全15日間を皆勤する体力がないことがこの1年で浮き彫りとなっている。休場のたびに一部ファンからは批判を受けているが、5月場所が中止なら雑音を気にせずじっくり調整に取り組むことが可能となるだろう。
23歳の大関・貴景勝は、場所中に左ひざを痛めた影響で3月場所は「7勝8敗」と負け越しており、5月場所も負け越しなら大関から関脇に転落。5月場所初日までに怪我の状態が良くならなければ非常に厳しい状況に陥ることも予想されるが、中止なら7月場所で勝ち越す可能性が高くなるだろう。
32歳の平幕・栃ノ心は、新大関となった2018年7月場所ごろから右足の怪我に悩まされており、「6勝9敗」の3月場所を含めて5場所連続で負け越し中。不振の原因が怪我にあることは明白だが、5月場所中止となれば怪我の治療・調整に時間を割くことができ、その結果平幕から大関に駆け上がった2018年前半の強さを取り戻せるかもしれない。
先行きが不透明な状況の中、貴景勝らが所属する千賀ノ浦部屋は4月6日から、幕下以下の力士11名を擁する鳴戸部屋は4月8、9日に、それぞれ部屋の公式ツイッターに稽古中の動画・写真などをアップしている。動画・写真内には他の力士と距離を取った各力士が、筋トレなど軽めの稽古に取り組んでいる様子が収められている。
4月3日の延期決定を伝える報道の中では、白鵬の「古傷を治す時間を与えてもらったと考えて体調を万全にしたい」とのコメントが伝えられている。5月場所の開催可否はまだ分からないが、中止でも各力士が白鵬のように前向きに捉えてくれることを願うばかりだ。
文 / 柴田雅人