「どういう大関になりたいか」と聞かれた朝乃山は、初々しく次のように答えた。
「誰からも尊敬され、目標とされる大関になりたい」
そんな新大関には、周囲から早くも“年内横綱”を期待する声が上がっており、条件はそろっているともいわれている。
「まず、周りの状況に恵まれています。春場所は白鵬、鶴竜の両横綱の“相星決戦”という番付通りの展開になりましたが、44回目の優勝をした白鵬は35歳、涙を飲んだ鶴竜も34歳。どちらも休場が増え、連投が利かないのです」(担当記者)
若い朝乃山にとって、つけ込むチャンスは十分にあるというわけだ。
「春場所はどちらにも勝つことはできませんでしたが、鶴竜戦は物言いがつくなど、本当に紙一重でした。これからの伸びしろを考えると、来場所以降は五分以上の熱い戦いが期待できる。そういう意味でも、朝乃山は『横綱になるべくして生まれてきた男』と言えるでしょう」(同・記者)
さらに横綱昇進を期待させるのは、ライバルの低迷だ。これまで「次期横綱候補」の最右翼が貴景勝、2番目が御嶽海といわれてきた。ところが、貴景勝は好不調の波が激しい押し相撲の弱点をさらけだし、春場所は7勝8敗と負け越した。
また、「大関昇進も時間の問題」といわれた御嶽海も一時の勢いを失い、平幕にあえいでいる。このほか、北勝富士、大栄翔、遠藤、阿炎、正代らも、朝乃山の前に立ちはだかるパワーはない。
加えて、朝乃山にも頑張らなくてはいけない理由がある。師匠の高砂親方(元大関朝潮)が今年の12月で、相撲協会の定年を迎えるのだ。「それまでに横綱に…」というのが人情というもの。
「もう1つ、上がある。そこを目指して頑張ります」
と、朝乃山は決意を新たにした。
年内の場所は、あと4つ。北の湖、千代の富士、朝青龍が3場所、輪島、双羽黒、曙は4場所で大関を通過し、横綱になった。果たして朝乃山も、これらの中に名を連ねることができるか。