そんな中、アラシック(嵐ファンの呼称)を狂喜させたのは、5月15、16の両日、およそ7年ぶりに東京・国立霞ヶ丘陸上競技場で開催するコンサート『アラフェス 2020 at 国立競技場』が、予定通り決行されることだ。同所で単独コンサートを初めて開いたのは08年で、以降全17公演はアーティスト史上最多。元先輩で、05、06年に開催したSMAPを超える記録だ。
嵐のコンサートチケットは、この10年ほどプラチナ化。同じジャニーズ事務所の所属アーティストのファンクラブに複数加入しても、FC優先で落選するのが当たり前だ。
コンサートプログラムは、いつもアラシックの予想を大きく上回る。10年のスタジアムツアーのオープニングは、600トンの水が巨大な滝から現れる超ド派手な演出だった。12年のドーム公演では、上から流れ落ちる水のカーテンに映像が映し出されるウォータースクリーンが初お目見え。巨大スクリーンに映された胎児、目を閉じたメンバー5人のアップは、圧巻の一言に尽きた。14年には、腕に着けた特殊なセンサーが筋肉の動きを感知して音を出したり、統一色を変える「筋電」を導入。アラシックも照明係の一員となって、巨大ドームを彩った。
コンサートを演出しているのは松本潤。そのスケールは年々レベルアップしており、これまでにあまたの不可能を可能に変えてきた。ところが、意外なことに、あまりにも身近すぎて未体験の企画がある。バンドスタイルだ。事情通の芸能レポーターが言う。
「03年にリリースされたシングル『とまどいながら』を、バンドスタイルで届けようとトライしたことがありました。櫻井翔さんはバイオリン、松本さんがキーボード、大野智さんがドラム、二宮和也さんがギター、相葉雅紀さんがベース。練習、リハーサル、ゲネまで済ませたのですが、本番直前でキャンセル。思うようなレベルに達しなかったのが理由です」
メンバーが一番“とまどいながら”音を奏でていた。以来、バンドスタイルに手を出していない。
ジャニーズのバンドといえばTOKIO。18年に元メンバーの山口達也さんが不祥事によってグループを脱退、事務所を退所して以来、音楽活動がストップしたまま。城島茂と並んで音楽への思い入れの強い長瀬智也は不満を募らせるのも当然で、2月26日に配信された「文春オンライン」の記事では、21年の退所が報じられている。
嵐で長瀬のようなミュージシャン志向が強いのは、やや意外だが二宮。バンドマンを目指して中学生のときにギターを始め、ベース、ピアノも独学で会得。
「07年にリリースされたアルバム『Time』の初回限定盤には、ニノの作詞による『虹』が収録されていますが、これが名曲。コンサートでは、ピアノの弾き語りで発表しています。10年にはこっそり、電子ドラムを購入。楽曲制作をしていたとか」(音楽雑誌の編集者)
TOKIOスタイルをボツにせざるを得なかった嵐。パーフェクトではなかったことが、逆にアラシックに親近感を与えたのかもしれない。
(伊藤由華)