白鵬の肘打ちのような張り手、かち上げは、これまで横審に何度も注意を受けてきた。去年の九州場所では、「見苦しい。そんなことをしなくても勝ってほしいという気持ちだ」と、横審の矢野弘典委員長にクレームをつけられたが、ルール違反ではないだけに本人は平然としたもの。
今年の正月明けも、「禁じ手というものではないので。自分は自分の相撲を取るだけです」と、白鵬は全く意に介さない。
そこで矢野委員長は、先場所の定例委員会後に改めてこの問題に触れ、「ルール違反と言っているんじゃない。横綱は違うんだから、より高く自分を律する基準を持ってほしいと言っているんです」と切り込んだ。
これに対して白鵬がどう反応するか。春場所の出方が注目されたが、答えはある意味で予想通りのものだった。
10日目を終えて白鵬は9勝1敗だが、勝ち星の内の半分以上が立ち合いに強烈な張り手を見舞い、勝機をつかんだものだった。とりわけ、初日の遠藤戦はこめかみを狙い、2発でKO勝ちしている。決まり手は、叩きこみだった。どうして白鵬はここまで横審に逆らうのか。
「白鵬は勝つには勝っているが、モタつきが目立つなど、明らかに衰えている。もう張らなきゃ勝てないんですよ。これから優勝争いが佳境に入りますが、ますます張るでしょうね」(担当記者)
こんな白鵬を周囲はどう見ているか。春場所2日目、白鵬にかかった懸賞はたった1本。10年前には歴代最多の年間2111本も獲得しただけに、何かの手違いかと思ったら、4日目も、6日目も1本。無観客で懸賞が半減しているとはいえ、いよいよスポンサーが背中を向け始めている。
大阪のファンはシビア。無観客でブーイングがないのが救いかもしれない。