日本においても1971年、国際プロレスへの初来日を手始めに、全日本プロレス、新日本プロレスでもトップ戦線で活躍した。
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1979年、ダスティ・ローデスは新日本プロレスに初参戦した。
入場時からの観客へのアピールや試合中の尻振りダンスなど、どこかコミカルなローデスのアメリカンプロレスと、ストロングスタイルを標榜する当時の新日では水と油かと思われたが、リングに上がったローデスは大喝采で迎えられた。
翌年の第3回MSGシリーズでは、シード選手として決勝リーグに登場。アメリカでも見られないアンドレ・ザ・ジャイアントやスタン・ハンセンとの夢のカードが実現すると、むしろローデスのほうが歓声を集めたほどであった。
猪木は常々、アメリカンプロレスをショーマンスタイルと否定的に語り、「われわれはそれとは違うストロングスタイルだ」と主張してきた。
多くの新日ファンもそうした言葉に感化され、「ショーマンスタイルの全日では物足りない」などと言っていたにもかかわらず、なぜ、ローデスは受け入れられたのか。ローデスのパフォーマンスが猪木信者の排他的な考えを覆すほどに、神懸かっていたというわけでもなさそうだが…。
「結局、猪木も新日ファンもどこか負け惜しみとでも言いますか、アメリカのトップスターが来ることはないという諦めの気持ちから、アメリカンプロレスを否定していたところがあったのでしょう」(プロレスライター)
ところが、来日直前までNWA世界ヘビー級王者だったローデスが、ついに新日マットにやって来た(’79年8月にハーリー・レイスを破って第53代王者になるも5日後のリターンマッチで敗戦)。
「縁がないと思っていたトップ中のトップの参戦に、ファンも舞い上がったといいますか、子供が予期せぬプレゼントをもらったような格別の喜びがあったのでは」(同)
猪木もそのあたりは柔軟で、ローデスへの観客の反応がいいと見るや、自らタッグを結成したりもした。
ただしローデスの人気が、元NWA王者という肩書によるものだけではなかったことも確かである。
同じく元NWA王者としては、ローデスと同じ’79年の4月にジャック・ブリスコも新日に参戦して、猪木のNWF王座に挑戦している。もっと前にはルー・テーズもいたが、こちらの2人はローデスほどファンから歓迎を受けていない。
「そこはやはり、ローデスの持つトップスターのオーラや華やかさがあってのこと。どこか陰気なブリスコや老いたテーズよりも、ローデスの明るさをファンは支持したわけです」(同)
’79年に山口百恵が引退し、その翌年に松田聖子がデビュー。さらには映画『スター・ウォーズ』が大ヒットし、’81年からは漫才ブームが巻き起こる。良くも悪くも軽薄志向の時代の空気が、ローデスを後押ししたところもあっただろう。
★アメリカ南部の荒くれ者を体現
「とはいえ、ジャイアント馬場が『ローデスの腰振りがなんでアメリカでウケるのか分からない』とくさしたように、日本のファンが“アメリカン・ドリーム”と呼ばれたローデスの本質まで、分かっていたとは思えません」(同)
貧乏な家庭に育ちながら腕っぷし一つでのし上がり、南部の荒くれ者風のファイトで、気取った奴らの鼻っ柱にエルボーを叩き込む。
豪華絢爛なコスチュームで登場しながらも、どこかそれが似合わず、マイクを使ったパフォーマンスでは田舎者丸出しの南部なまりでまくし立てる愛らしさ。
こうしたローデスのスタイルがウケる下地には、アメリカ特有の南北問題や経済格差、人種問題があったわけで、そこを異文化の人間が正しく理解するのは難しい。
「3度もNWA王座に就きながら、いずれも短期間。そうしてみるとローデスは、アメリカ限定の一種のローカルチャンプと言えるのかもしれません」(同)
’81年にローデスが2度目の王座に就いていたとき、全日が“NWA王者のシリーズ参戦”を発表したことがあった。
NWA王者の全日参戦は半ば契約上の義務のようなものであったが、引き抜き合戦が繰り広げられていたさなかに新日常連となっていたローデスの場合、全日に再び参戦となれば、そのインパクトは大きかったはずだ。
しかしながら、ローデスはリック・フレアーに敗れて、来日直前に王座陥落。新王者となったフレアーは、ジャンボ鶴田や天龍源一郎、さらにはテリー・ファンクの挑戦を跳ねのけて王座防衛ロードを突破している。
一方、ローデスは同じ時期に新日へ参戦し、ディック・マードックとのテキサス・アウトローズを復活させて暴れていた。
さて、そこにはいったいどんな駆け引きがあったのか。そうしたことに思い巡らせるのも、昭和プロレスの楽しみの一つであろう。
ダスティ・ローデス
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PROFILE●1945年10月12日〜2015年6月11日(69歳没)。アメリカ合衆国テキサス州出身。
身長187㎝、体重137㎏。得意技/エルボー攻撃、パイルドライバー。
文・脇本深八(元スポーツ紙記者)