掃除と同様、元受刑者たちのテクニックがさえるのは、布団やシーツ、タオル類。とにかく几帳面に生活することを強いられる彼らは、こうした布類を収納する際もただ折り畳むのではなく、角が尖るほどにビシッと折り目をつけねば気が済まない。
洗濯物の畳み方にいちいち細かい男は、服役経験を疑ったほうがいいかもしれない。
▪️字がきれい
自由時間が豊富なわりに、やることが少ない受刑者たちは、必ずといっていいほど日記をつけている。
おまけに、シャバに残した家族や恋人に向けて手紙を欠かすことがなく、それに加えて習字の特別教育もあるため、とにかく彼らは字が上達する。
長期服役者になると、達筆すぎて何が書かれているか分からないレベルに至る例もよくあり、刑務官たちも目を通すのに苦労するという。
▪️絵もうまい
手紙に書く文字と同様に、受刑者たちが熱を入れるのがイラストだ。一番人気は刺青の柄となるような龍や神仏系だが、嫁や恋人の似顔絵を描いて(手紙で)送る者も少なからず。
おまけに子供がいる場合は、その子が好きなドラえもんやプリキュアの絵までマスターしてしまうため、非服役者との絵心の違いは明らかだ。
▪️読書家である
刑務所内の暇つぶしといえば、日記や手紙のほかにも囲碁や将棋といろいろあるが、語るに外せないのが読書である。それも、近代作家の新刊など1〜2日で読み尽くしてしまうため、大事な金がもったいない。それゆえ『徳川家康』(山岡荘八)や『三国志』(吉川英治)といった肉厚の物語が大好物なのだ。何度も繰り返して読むので、場合によっては内容を暗記してしまうこともある。
同じ読書とはいえ、数十分で読めてしまう漫画は、やはりコスパ的な理由で人気がなく(逆に留置所では需要大)、シャバに出てからも苦手とする者が多い。
▪️小さな賭け事が大好き
刑者たちが、最も熱狂するのは賭け事だ。もちろん、塀の中でギャンブルなど許されないので、大相撲やプロ野球の勝敗や工場でこっそり自作したサイコロを使ってのチンチロリンなど、実に小規模な博打が繰り広げられる。
おまけに、その際に賭けられるのは当然ながら現金ではなく、ティッシュや石けんといった日用品。飲み会の際に「1個残った唐揚げを誰がもらうか賭けようぜ」などとセコすぎるがいたら、元受刑者である可能性が高い。