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【本好きのリビドー】

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提供:週刊実話

◎悦楽の1冊
『平成批評―日本人はなぜ目覚めなかったのか』 福田和也 角川新書 860円(本体価格)

★日本人は平成をどう生きてきたのか

 若気の至りとはいえ自分の祖国を初めて「醜悪だ」と感じたのは、バブル崩壊前後の頃だった。筆者がまだ高校生じぶんの、平成もごく初頭だ。

 金にあかせてゴッホの『ひまわり』を落札したかと思えば、“俺が死んだら棺に入れて一緒に焼け”とほざく田舎者が大手を振り、お立ち台じゃあ尻を振るバカ女どもの間でアッシーだ、メッシーだ、ミツグ君だなぞとおぞましい卑語が弥漫する一方で、湾岸戦争の勃発に政府は右往左往するばかり。国会では牛歩戦術とやらの茶番劇をとくと見せつけられて、顧みて、実に嫌な時期だったという記憶しかない。

 そこへ現れた著者の『遙かなる日本ルネサンス』(文藝春秋)や『「内なる近代」の超克』(PHP研究所)に、どれだけ鼓舞されたことか。戦後民主主義とニューアカに代表される左派知識人の偽善性と自己欺瞞を徹底的に批判し、過去から未来へ来るべき日本の自画像を説く著者の力強い言葉の数々が、どれほど当時の筆者の精神にとって旱天の慈雨であったか。

 第二次大戦中、ナチスドイツに積極的に協力したフランスの文学者たちを評伝の形で論じた「奇妙な廃墟」で’89年にデビューした著者が、自身のキャリアとまるまる重なる平成とはいかなる時代であったかを改めて問う本書。かつて「作家の値打ち」であまりに情容赦ない採点評価ぶりに読者すら震え上がらせた舌鋒の鋭さ、攻撃性こそ鳴りを潜めて静かな筆致で語られるが、そのぶん問いの重さは一層増す。

 気になるのは交流の深かった江藤淳や立川談志を追想する“去りゆく人々”の章に西部邁の名が見えぬ点。一時は“大師匠”と呼ぶ蜜月の仲だっただけに、若干寂しい。
_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 夏になると、各地で恐竜に関するイベントが盛りだくさん。もちろん子供向けの催し物だが、夢中になっているのは意外とオトナが多い。ガキの頃に覚えたワクワク感がよみがえってくるのだろうか…。

 とはいえ、我々オヤジたちが少年時代に知った恐竜の常識は、今や覆されつつある。その代表例が、恐竜は羽毛に包まれた体を持った体温を維持できる生物であり、外部の温度により体温が変化する、爬虫類のような冷血動物とは違っていたという点だ。

 そうした新事実を解説し、より一層興味を喚起してくれるのが『NHKスペシャル 恐竜超世界』(日経ナショナルジオグラフィック社/2000円+税)。7月に放送されたNHKスペシャル『恐竜超世界』の書籍版である。4KCGで再現した恐竜たちの姿が立体的かつ精細で、また羽毛を持った恐竜たちの姿が新しくも新鮮だ。

 恐竜化石の宝庫といわれるモンゴルのゴビ砂漠での発掘調査を通じて、いろいろ分かってきたそうだ。

 ティラノザウルスと比べると脳の容量が大きく、知性もあり、体温を保つことができたため南極まで進出できた種がいたというのだから驚く。これが「陸編」。

 続く「海編」では、陸に住んでいた小さなトカゲが生存競争に敗れて海での暮らしに活路を見出し、それが長い年月をかけて巨大生物に進化してきたなど、全く知らなかった新説が楽しく読める。

 少年時代にタイムスリップでき、太古へのロマンをかき立ててくれる1冊。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【昇天の1冊】著者インタビュー 黒川伊保子
妻語を学ぶ 幻冬舎新書 780円(税込価格)

★男性脳は問題解決型、女性脳は共感型に

――女性の機嫌の悪さは18種類あると言います。意外と少ないような気もしますがいかがでしょうか?
黒川 女性は腹を立てた時、男性を“理解力が低くあまりにも鈍感だ”と感じています。そんな相手に分かりやすく不機嫌であることを伝えるために、「定番の」「記号化された」表現をするのです。私自身は18種類は多すぎると感じました。むしろ、男性脳は18種類も見分けられないのではないでしょうか? まぁ、そのためにこの本があるわけですけどね(笑)。ただし、男性脳が鈍いと言っているわけではありません。男女では脳のチューニングが違うので、互いの気持ちが通じないだけなんです。

――夫が妻をおだて上げなくてはいけないように感じる人もいるようですが…。
黒川 おだてたくない人は、もちろんしなくていいんですよ(笑)。女性はコミュニケーションの基本として、“共感”を求めています。相手の話を否定する時も、「気持ちは分かるけど、違うわ」と、まずは共感してから。肯定する時は、「分かる分かる、そうよね!」と、これも共感してから。
 女性は愛する人に共感がないと感じた時、絶望して機嫌が悪くなり、愛していない人に共感がないと感じた時は、安心して無関心になります。機嫌を損ねるということは、そこに愛があるのだから、男性としてはおだてるくらいの器量があってほしいですね。

――男性脳と女性脳の違いとはなんでしょうか?
黒川 男女とも脳に違いはありませんが、あらかじめ、生存と生殖に有利な方向性にチューニングされています。例えば、少し離れた場所の動くものに瞬時に照準が合うことと、目の前を綿密に見つめ続けることは、同時にはできません。このため、脳はとっさに使う方を決めているのです。
 対話も同じで、男性脳は問題解決型に、女性脳は共感型にチューニングされているのです。そのため、日常の対話がすれ違っていくわけですね。

――夫婦が円満にいくためのコツを教えて下さい。
黒川 互いに、相手の脳のチューニングを知ることです。妻にどう話しかけていいか分からない時は、“自分に起こったちょっとした出来事の話”をプレゼントしてあげるといいですよ。実はこれ、相手の話を誘う“呼び水”でもあるんです。
 せっかく夫婦になったんですもの、「俺がおだてる必要があるのか」なんて、器量の狭いことなど言わないで、ぜひ、試してみてください。妻が優しい顔になったらきっと、「やってみてよかった!」と思うはずですよ。
_(聞き手/程原ケン)

黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
1959年生まれ。(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、’03年に(株)感性リサーチを設立。脳機能論とAIの集大成による語感分析法を開発し、マーケティング分野に新境地を開いた、感性分析の第一人者。

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