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「チームを乗せていく」 金本阪神の『超変革』までの道のり(後編)

 6番・鳥谷敬(34)。オープン戦終盤、「1番・高山、2番・横田」の新打順が続いたため、これまで主にリードオフマンを務めてきた鳥谷の打順も変わるのは予想できた。
 「3番・鳥谷、ヘイグは5番か6番だと見ていました」(プロ野球解説者)
 鳥谷の6番は降格ではないようだ。鳥谷が3番なら、高山、横田と左バッターが3人続く。チーム関係者によれば、4番もゴメスではなく福留でスタートすると決めていたそうだ。左バッターが4人続くのを避けたのだろう。もっとも、「鳥谷、西岡」で1・2番コンビを編成していたら、前政権と代わり映えしなかった。金本監督はこの新打順を決断するまで、それなりの時間を要したそうだ。

 「キャンプ序盤だったと記憶していますが」と球界関係者が前置きし、金本監督がいかに打順編成に悩んでいたかを教えてくれた。
 「DeNAのラミレス監督が『2番梶谷』の新打順を考えているとの情報が入ってきました。金本監督が口にしたのは、『そう来たか!?』のセリフでした」
 梶谷隆幸はトリプルスリーを狙えるDeNAの主力選手。ラミレス監督は就任してすぐ、打線で期待する選手として、主砲・筒香嘉智とともにその名前を挙げていた。3番バッタータイプとして評価されているが、そのクリーンアップ候補を2番に置く攻撃的打順を知って、金本監督は「先を越された」の心境だったという。
 「基本的に『バントはやらない』の方針。そうなると、2番の打順に3番タイプのバッターを置くことができます。金本監督は新2番バッターをスローガンである超変革の象徴にするつもりでした」(前出・関係者)
 その攻撃的2番バッターの候補の1人に鳥谷も含まれていた。新人の高山俊(22)、横田慎太郎(20)、そして、二塁手争いを繰り広げた大和(28)もそうだった。
 「ラミレス監督は梶谷の故障で『2番梶谷』の攻撃的打順の変更を余儀なくされましたが、同じ梶谷タイプ(3番バッター)ではインパクトがない。参考にされたのは、星野仙一氏が監督だったころの打順。『2番赤星』です。若い高山と横田を1、2番で並べ、チームに勢いを付けようとした部分もありますが」
 赤星憲広氏(現解説者)は2番の打順で、首位打者を獲っている。2番バッターが俊足であれば、併殺プレーも成立しにくい。

 鳥谷にとって、6番の打順はむしろチャンスではないだろうか。意外だが、鳥谷のバットマンタイトルは最高出塁率(2011年)だけだ。今季は走者を溜めた場面で打席がまわってくる。出塁率の高さは30代半ばとなった今も変わっていない。「出塁率=ヒット」と見れば、『6番鳥谷』は打点王のタイトルを狙える。
 「あまり目立っていないが、4年目の北條史也(21)の成長を口にするコーチもいます。遊撃手なので鳥谷の控えが長いが、ウカウカしていたら、金本監督は北條を使うかもしれない」(プロ野球解説者)
 鳥谷はキャンプ、オープン戦で若手に混じって居残り守備練習をこなしていた。数少ないレギュラーを公言されたベテランが懸命になれば、他選手も自ずと練習熱心になる。これも『超変革』の一環でもある。

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