眠り続けた高い能力がようやく目を覚ました。新しい舞台を得て、フサイチアウステルがまた輝きだした。
「もともと重賞でも好勝負しているし、ディープインパクトの5着もあった。クラシックで掲示板に載るだけの力があった馬だからね」と池江寿師はうなずいた。
3歳秋のセントライト記念、そして4歳のAJC杯とGIIで2度の2着がある。2005年の菊花賞では、ディープインパクトの5着に健闘している。いつでも重賞を勝てると思われた実力馬だが、その後は意外なほど長く低迷した。理由は、皮肉にも自身が積み重ねたその実績にあった。
「ずっと中距離を使ってきて、妙に折り合いがつくようになってしまった。ダラダラした走りになってしまったんだね。直線では自分で走るのをやめてしまっていた」
2000m以上で残した蹄跡が足かせになった。だが、ここ2走はカンフル剤を打つ意味でマイル戦に投入された。これが見事に効いた。
都大路Sは16番人気で鮮やかな逃げ切り。続く米子Sも逃げ切った。
「マイルを使って完全に復調してくれた。とくに、前走の米子Sは外回りを速い時計で粘り込んだ。あれこそ力の証しだし、前々走がフロックでないことを示してくれた。心肺能力が優れているから中距離を走らせていたけど、本質的には千四、マイルぐらいがベストなんでしょう」
その後はここを目標に仕上げられてきた。もちろん調整に狂いはない。新潟の外回りは京都のそれよりさらに直線が長くなるが、その分、道中はほぼ確実にスローに落ちる。楽に先手を奪えるはずで、むしろ自分の型に持ち込みやすいはずだ。
「本当にあきらめず、最後までしっかり走るようになった。鞍上の赤木君もプロキオンSを勝って絶好調。人馬とも勢いがあるから、何とか勝ちたい」
迷いはない。ケレンミのない逃走で、猛暑の新潟を駆け抜ける。