search
とじる
トップ > レジャー > 「渋井哲也の気ままに朝帰り」 求めているものは「育てがい」のあるキャバ嬢

「渋井哲也の気ままに朝帰り」 求めているものは「育てがい」のあるキャバ嬢

 「キャバクラ、おっぱい、ヘルス。なんでもありますよ」

 相変わらず、多くの、新宿歌舞伎町の客引きはこうした味気のない声の掛け方をしています。こんな「なんでもあり」のトーンは、「歌舞伎町にはなんでもあるんだな」と思うことはあるにしても、その客引きの言うことを信じようとはしないのではないのではないでしょうか。客引きは、見ず知らずの私に気安く声をかけ、「私は信じられる人間ですよ」的なオーラを出している。しかし、まったく信じる理由が見つからないときは、よけいにがっかりする。話を聞くだけムダだと思ってしまうものです。

 そう思っていると、歌舞伎町などの繁華街から徐々に遠のいてしまう。私も、「なんでもありの客引きはうざい」と思って、夜の歌舞伎町に出向く回数は減っていった。

 こうした「なんでもあり」の客引きは、店舗の正式な従業員ではなく、フリーの客引きです。フリーということは、特定の店舗だけに勧誘するわけではない。そのため、「今夜はどこで遊ぼうか?」と迷っている客は、興味を引かれるかもしれません。しかし、中には「嘘つき」の客引きもいて、事前に説明をしている内容とは違った店舗に連れて行かれます。経済的にも精神的にも余裕があれば、「騙されるのも歌舞伎町だよ」と思うこともできますが、余裕がないことが多く、ほんとにイライラします。こうした現象は歌舞伎町だけでない。どこの繁華街も同じです。

 でも、私としては、夜な夜な出かけてしまうのが好きなのです。先日も、上野の繁華街に出かけてしまった。日曜日だったこともあり、どの店も客は少なかった。私は、素人を売りにしているキャバクラに行ってみた。キャバクラ経験は数か月で、年齢的には22〜23歳くらいが多かった。話題も広いわけでもないので、「つまらない」と思う客もいるんだろうが、私も含め、この店に来ている客は、「育てたい」と思っているのだろうと、想像ができる。

 こうした素人と接していると、歌舞伎町の客引きが言う「キャバクラ、おっぱい、ヘルス」というなんでもありの言葉が、むなしく思えてくる。そんな私が求めているのは、「なんでもあり」なんじゃない。「何もないからこそ、育てがいがある」という感覚なのだろう。
 
 結局、その店舗でキャバクラ嬢と交わした会話は、いつも以上に覚えていない。しかし、なぜか、また行きたいと思えるような雰囲気づくりをしていた。水商売に片足を突っ込んだ女子大生や女子専門学生、なかには新人OLがいるが、そうした空間では、むしろ、「お金のために働いている」というリアリティを呼び起こす。その反面、長年キャバクラで働いているにもかかわらず、ろくに会話ができないキャバクラ嬢と過ごすよりは、楽しく思えてしおまう。経験が浅く、素人だからこそ、「ダメダメ」な空間が楽しいのだ。

<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

関連記事


レジャー→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

レジャー→

もっと見る→

注目タグ