なにも、追いつけなかった。速く、そして切れた。ため息が出るような強さでダイワスカーレットは3歳最強の座に上り詰めた。
前走の秋華賞は激戦になった。1000m通過は59秒2のハイペース。それを引っ掛かりながら2番手で追走した。
後方ではダービー馬ウオッカや切れ者ベッラレイアが控えている。普通なら差し馬の餌食(えじき)になる厳しい流れだったが、それでもスカーレットは自信満々に4角先頭の積極策に出た。上がり3Fはいつものように33秒9の鋭さ。逃げたヒシアスペンはシンガリに沈み、3番手にいたザレマは15着。先行馬が総崩れするなか、涼しい顔で後続を封じ込んだのだから恐れ入る。
「まだ余裕があった」というレース後の安藤勝騎手の第一声も驚くばかり。ダービーで男馬をねじ伏せたウオッカに影すら踏ませず、今年の3歳最強の座に就いた。
今回はその地位を確固たるものにする戦いだ。前走がマイナス6kg。デビュー以来、最少体重の484kgとギリギリに仕上げられただけに反動が気になるが、松田国師は「ローズSの後よりダメージがなく、無理なくこられた。さらに上向いています」とうなずいた。
1週前追い切りは10月31日の栗東坂路で54秒5→39秒7→25秒9→12秒9。尻上がりにラップを上げる理想的な併せ馬だった。
「ラストは併走馬と並ばせて気持ちを高ぶらせないようにした。女馬だからやりすぎるのは良くない。脚元のむくみもなく、春より安定している」と話した。
一方で、強豪古馬やウオッカの逆襲を封じる策も練られている。前走と同じ京都といっても今回は内回りから外回りへ。直線が長くなる。
「この条件は瞬発力勝負になりやすい。こちらはいかに後続に脚を使わせるかでしょう」
選んだ作戦は3角の下りから一気のロングスパート。スカーレットの力を信じているからこそ、肉を斬らせて骨を断つ。