そして、亀のように歩みのノロい者でも、努力し続けることによって、やがてウサギのような才能のある相手にでも勝てるという教育的な話しとして語られています。
でも童謡の「ウサギと亀」の歌詞を読む限りでは、そんなにいいお話とは思えないのですよ。ちょっとこの歌詞を読み直してみましょう。
【♪もしもし 亀よ 亀さんよ世界のうちに お前ほど 歩みの のろい ものはないどうして そんなに のろいのか】
さて、まずここまでですが、この歌詞を読む限り、確かにウサギはロクなもんじゃないという印象を受けます。
なんといっても、いきなり相手の亀をバカにする言葉から、この歌ははじまっているのです。
【♪なんと おっしゃる うさぎさんそんなら お前と かけくらべ むこうの 小山の ふもとまでどちらが 先に かけつくか】
この歌詞によると、先に競争を挑んだのは、なんと【亀】であるということです。
そしてこの亀、負けずギライです。
しかし、この亀の間違いは、自分の得意分野での勝負を挑まなかったところでしょう。
例えば、この亀がもう少し利口なら
「そうなんだ。でもボクは水の中なら早いんだよ」
とか
「ボクは足が遅いけど、頑丈な甲羅があるのさ」
と、自分の良さをアピールすればよかったのです。
しかし、亀はそうせず、自分の不利なレースにのぞみます。
当然、ウサギは亀を引き離し、ダントツトップのまま走ります。こんなことは、勝負を仕掛けた亀だってわかっていたことのはず。
しかしウサギは慢心のせいか、次のような行動にでます。
【♪どんなに 亀が 急いでもどうせ 晩まで かかるだろう ここらで ちょっと 一眠りグーグーグーグー グーグーグー】
と、勝負の途中でウサギは眠ってしまうのです。それにしてもすごい眠りっぷりです。
亀の挑発的なレースの挑戦といい、圧倒的有利なウサギの眠りっぷりといい、もしかしたら亀はウサギに一服盛ったのかと疑いたくなるほどです。
そもそも、わたしが亀に悪意を感じるのは、亀は眠っているウサギを追い抜いているのです。話しの流れから、このレースは長距離走と考えられますが、亀は「グーグーグーグー グーグーグー」と、轟音をたてて眠っている横をすり抜けていったはずなのです。
おそらく遅い足を抜き足差し足して、起こさないように…、そ〜っと、そ〜っと…。
なぜ亀は、ウサギが眠っているとわかったんでしょうか? 普通、スポーツの最中に選手がイビキをかきながら眠ってしまっていたら、脳卒中など脳の血管が切れるなどの病気を疑うのは当然のことです。
しかし亀はそれをしなかった。
あるいはスポーツマンシップをもっているのなら、起こしてあげて正々堂々と勝負するのではないでしょうか?
少なくとも、この童話・童謡を教育的な話として子どもに聞かせたいならば、ウサギを起こしてあげるべきかも知れません。
しかし、子どもたちに「勝負の世界は非情なのだ」「相手を出し抜け! 隙を見せた相手が悪いんだ!」ということを教えるには、良い童話・童謡であるのかも知れません。
では歌詞の最後の言葉をご紹介しましょう。
相手が眠ってしまったことで、常識を覆す勝利をした亀はウサギにいいます。
【♪あんまり 遅い うさぎさんさっきの 自慢は どうしたの?】
もの凄い亀の勝ち誇りっぷりです。
思いっきり相手を馬鹿にしまくってます。
わたしはこの亀のようなヤツとは、絶対に友達になりたくないなあ。
いい話と思っていた「ウサギと亀」も歌詞から読み解くと、ちょっと残念な話だったりしますね。(笑)
(巨椋修(おぐらおさむ) 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/