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キャバ嬢が生まれる瞬間(59)〜漫画のネタが欲しかった女〜

斉藤美佳(23歳・仮名)

 私は今まで生きてきて、ほとんど小説を読んだことがない。村上春樹とかピース又吉の小説が話題になったりするけれど、活字って読んでると段々ボーッとしちゃう。唯一、手に取ったことがあるのは中学生ぐらいの時に友達に貸してもらった『リアル鬼ごっこ』だけど、3ページぐらい読んでやめた。とにかく漫画が好きだったんだよね。少女漫画だけでなく少年漫画誌も毎週コンビニで立ち読みしたり、友達に見せてもらったりしながらいつも読んでた。

 それで高校を卒業した私は、とくにすることがなく、バイトを探し始めた。どこがいいかなと思った時、やっぱり私が選んだのは漫画喫茶。まず面接へ行く前に通える距離のお店をすべて周った。確かめたかったのは店の暇具合。やっぱり忙しいお店じゃ働きたくないからね。何件か周って、その中でも一番客がいない店を必死で探した。するとあるマイナーな駅前の漫画喫茶で、店員が座りながら漫画を読んでいる現場を見つけ、私はここで働くしかないと思った。

 案の定、そのお店は予想通りゆるくて、客が全然来なかった。さらに暇な時は漫画が読み放題で、店長もずっとネットゲームをやっている人だったから厳しくない。だからバイト中にたくさんの漫画を読んだのだけど、一番私が惹きつけられたのは、女性が自身の体験を基にして書いたエッセイ系漫画。

 例えば峰なゆかさんの『アラサーちゃん』が、とても面白かった。私はまだアラサーじゃないけれど、それでも“あるある!”と共感を呼び起こしてクスっとさせる作者のセンスには脱帽した。いつしか私もこんな漫画を書きたいって、初めて夢というモノが持てた。だから私は漫画の専門学校に通うための資金を貯めたくて、漫画喫茶を辞め、時給のいいキャバクラで働き始めたんだよね。それといつか漫画のネタにするために、お店で出会った男性とのエピソードもどんどんメモしていくつもり。もっと絵を勉強して将来はキャバクラあるある漫画を書きたいな。

(取材/構成・篠田エレナ)

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