笑顔のまぶしさが逆に鼻につく麻生首相は15日夜、記者団に囲まれて不敵な笑みを浮かべた。次期衆院選のマニフェスト(政権公約)作成をめぐる自民党内の動きについて質問を受けると、「選挙が遠いとか近いとか、勝手に結びつけないほうがいいよ」とぴしゃり。暗黙のうちにマニフェストを隠密作成中であることを認めた。
永田町関係者は「すっかり血色がよくなった麻生首相は、“麻生降ろし”の風が2度と吹かぬよう、党内の求心力を高めることに全力を注いでいる。本当は余勢をかって堂々とマニフェストを作成し、解散・総選挙に向けた戦闘ムードを醸成したいところ。しかし、ヘタをすると『解散風』をあおることにもつながりかねないので慎重に作業を進めている」と指摘する。
マニフェスト作成をめぐる自民党内の微妙な空気は、幹部の言動からもわかる。
古賀誠選対委員長は14日、菅義偉選対副委員長を座長とする政権公約プロジェクトチームを設置する方針を記者団に表明。ところが翌15日、細田博之幹事長は記者団に「まだ決まっていない」とあっさり否定した。その上で「公約づくりを始めると、議員は『すわ選挙だ』と驚いて走り回る。大型連休前は政策、法案成立に向かって努力する」と沈静化に躍起だった。
ちぐはぐな隠密作成の背景には、解散をめぐる首相のフリーハンドを確保したいとの考えがある。西松建設事件による民主党の敵失で内閣支持率は上昇傾向。選挙で浮き足立つことは国会審議も含め政権運営にマイナスでしかない。一度でも「解散風」が吹けば、消費税率などをめぐって党内対立を招くおそれも。
麻生氏は9日の日本記者クラブでの質疑で、マニフェスト作成に関して「既にスタートしている。新聞社に分からないようにやるのが大事だ」とけむに巻いた。実際には、10日の役員連絡会で細田氏がひそかにマニフェストを策定する場を検討するよう指示したのがスタート。バレバレの隠密作戦遂行に、麻生氏はニヤけ笑いをこらえられずにいる。