ドラマの放送中の80年6月に、シングル曲『さよなら好き』でデビューを果たし、本格的にポスト山口百恵なんて言われだしたのだ。80年といえば、松田聖子を筆頭に河合奈保子・柏原芳恵・岩崎良美・田原俊彦などがデビューをして、アイドル新時代が幕開けとなった。粒ぞろいと言われた80年の新人ということで、各局が行っている新人賞レースも激戦と思われたが、松田聖子と田原俊彦のマッチレース状態になっていた。それでもノミネートされたアイドルたちは、一気に飛躍をしてアイドルブームの一翼を担っていった。
たくさんの注目のアイドルがいたが、私にとって浜田は特にファンだった訳では無かったが、歌手デビュー前のドラマ『赤い魂』を見ていたので、ちょっとした思い入れはあった。その浜田を初めて観たのは81年の冬頃に『レッツゴーヤング』(NHK)に行った時である。『レッツゴーヤング』は、NHKでは数少ないアイドル番組であり、しかも公開収録を行っていたので、観覧が可能だったこともあって、何度も足を運んだ現場である。その中でも注目なのが「サンデーズ」である。
サンデーズとは、番組内で結成されたオリジナルグループであり、旬なアイドルが一同に揃ってレギュラー出演していたのだ。浜田もそのサンデーズの一員であり、様々なシーンで登場した。これまで大人っぽくシックなイメージが先行していたが、この番組を通して明るくて楽しい面も出てきたので、新たな浜田を発見できたのではないかと思う。
しかし浜田に会える機会がなかなか訪れなかった。ようやく浜田に会えたのは、83年の夏頃だった。この日は『8時だョ!全員集合』(TBS系)の放送があって、TBSで出待ちをすることにしたのだ。本来は『8時だョ!全員集合』は、渋谷公会堂を中心に生中継をする番組なのだが、この時はなぜかTBSのスタジオから生放送が行われた。こういう形式は滅多に無いので、TBSに出向いてみることにした。
生放送ということもあって、出てくる時間もわかりやすく、番組終了後すぐに浜田はテレビ局から出てきた。多くのファンが殺到したが、何とか浜田に近づいて写真を撮ろうとしたが、逆にあまりにも近くに寄りすぎたため上手く写真を撮ることができなかった。その代わりという訳ではないが、誰よりも近くにいたことで、乗り込む車のところで、サインを貰うことができた。この時にサインを貰えたのは、私だけだったので、出待ちをしていた人たちが、私のところに集まってきて、浜田のサインを見せびらかしていた。今思うとちょっと恥ずかしい行為だが、貰った瞬間はかなり嬉しかったので許して下さい。
浜田は80年にシングルデビューをしたのだが、大きなヒットに恵まれることなく84年に発売した『春は四島(しま)から』を最後に新曲を出さなくなってしまった。次第にアイドル活動はフェイドアウトしてしまい、85年頃からは時代劇を中心とした女優へと転身した。90年には突然ヌード写真集『ハーフ・ムーン』を発売して、多くのアイドルファンを驚かせてくれた。以降も味のある役どころで女優として活動していたのだが、95年に結婚して引退となった。その後は出産して、家庭に入ってしまった。
今でもアイドル時代からの根強いファンも多くいて、浜田の歌声を生で聴きたい声も多くあがっている。2010年には『浜田朱里 ゴールデン☆ベスト リミテッドーシングル・コレクション』が発売されているが、やはり生声を聴きたい希望も多くあるので、いつか一日限りでもいいので、復活コンサートをやって欲しいものだ。果たしてそんな日は来るのか?
(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)
【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。