そのアプリ「ケルベロス」を、男は昨年10月下旬から12月下旬の間にかけ、知人女性のスマホに本人に断りなくインストールした。沖縄県警は、男が女性の位置情報を不正に取得していたとみて捜査を続けている。遠隔操作用アプリを使用した摘発事案は沖縄では初めてだという。
「ケルベロス」は、もともと“盗難防止”を目的としたアンドロイド用の遠隔操作アプリだ。GPS機能を使ってスマホの現在位置を特定し、PCから遠隔操作でスマホのあらゆる機能を利用できる。具体的には「強制的にカメラを起動させ、写真を撮れる」「周囲の音声を録音できる」「強制的にそのスマホから電話をかけられる」といった操作だ。大きな問題は、他人によってこうした行為をされてもスマホ所有者はアプリを起動していることすら分からないことだ。また、設定次第でインストールした「ケルベロス」をスマホ上の「ホーム画面」「アプリ一覧」から非表示にできてしまうのも問題だ。無料期間は1週間でそれ以降は有料となるが、1デバイス(1端末)で年5ユーロ(約655円)という驚くほどの安さで入手できる。
ネット上では、このアプリに対してさまざまな声が寄せられている。「自分のスマホに入れたら、いざっていうとき使えそう」「位置情報などって…ほとんどの情報わかるってことでしょ? 気付かずにインストールされてたら怖い…」「ちょっと興味ある。PCからスマホ使えるなら便利だし」「他人のスマホに入れた時点でストーカー行為じゃない?」「探偵とか警察ならわかるけど、一般人が使うには必要以上に機能あり過ぎでしょ」といった意見もあった。
広島県でも2014年、同じアプリで事件が起こっている。中学校教諭の男が「スマホをなくしたときに便利だよ」と元交際相手の女性をそそのかし、スマホに「ケルベロス」をインストールさせた。その際にログイン情報などを取得し、PCを通じて女性のスマホを遠隔操作。「666回の音声録音」「399回の通話履歴確認」「写真撮影」「メール送信」などを行い、女性の日常生活を監視していたと見られている。女性の友人に不審なメールが届いていることが分かり犯罪発覚に至ったが、下手をすれば永遠に気付かれない可能性もあっただろう。
「ケルベロス」は盗難防止を目的としたもので、自身のスマホが紛失した際には大変便利なアプリと言えるだろう。扱う側の倫理観が問われる問題だ。