「皐月賞(3着)では負けても一番強い競馬。が、あれならと自信を持って臨んだダービー(7着)ではテンションが舞い上がって終始、力みっぱなし。どっちがあの馬本来の姿なのか、ボクにも分からなくなった」と、名手・アンカツは無冠に終わった悪夢の春をきつねにつままれたかの表情で振り返るが、デビューを目指した2歳の夏の函館で右の背腰を痛め、なかば慢性的弱点となっていたのは事実。その状況下でダービー3勝目の栄冠をつかみとろうとした松田国師の悲壮感漂う諸刃の剣の極限の仕上げを誰がとがめられようか。
無論、セレクトセールで億のお代をつけたフサイチ軍団の超高馬。口外できない厳しい状況下にあっても皐月賞、ダービーと走り続けることしかできない悲しい十字架を背負わされた同馬にとってはこのひと夏の束の間の休養が他のどの馬よりも心身ともの良薬になったのはいうまでもない。
「宇治田原の広大な山の中で森林浴させ、帰厩後も順調に15-15を乗り込んだ。この暑い中、何度もジョッキーにまたがってもらって、先々週の時点で坂路51秒台をマーク。春より頭の位置が下がってストライドが大きくなった分、攻め時計も出る。馬体の成長?精神面の成長?それはみなさんの解釈で活字に起こしてくれればそれでいい。でも、今のホウオーを見て悪く書く人は、ヘソが45度に向いている。俗にいう“へそ曲がり”な記者でしょうね」
この挑戦的な言葉を心から信じて、捲土重来を期して登場するフサイチホウオーの単勝にローズSで勝った120万円すべてをぶち込む。