「そうだよ〜」
「もしかして…橋口さんがくるの? だから、休日出勤になったんでしょ!」
「そうだよ〜」
「本当に大好きなんだね、橋口さんのこと」
「…そんなんじゃないよ」
ツンデレなんだから! と言って盛り上がる店の女の子の方を見ないように、スタッフルームをあとにする。だって、首から耳まで真っ赤になったこんな顔を誰かに見られたくないんだもん。ボーイの子に指示されたボックス席につくと、申し訳なさそうな顔をした橋口さんが待っていた。…本当に申し訳ないとは、思っていないはずなんだけどさ。
「聖菜、悪いね。今日休みだったんだって?」
「…」
「えっ、怒ってるの?」
「休みだってわかって、昼間電話してきたんでしょ?」
「ああ、バレてた?」
「バレバレだよ! ていうか、出勤日も休日も関係なく橋本さんと一緒にいる気がするんだけど」
「聖菜に会いたかったんだよ」
でました、いつもの口説き文句。まあ、その言葉に今夜もドキッとしちゃってる私がいるんだけどね。
「じゃあ、店じゃなくてもいいでしょ。プライベートで会うのが嫌なら、アフターとかに時間とるよ?」
「だって、聖菜が店で他のお客さんと楽しそうにしてるかも? って考えるだけで泣きそうになるんだもん、俺」
「またまた、うまいこと言って!」
橋口さんと同じように軽いノリで返すものの、やっぱり私の顔面は赤面していた。
最初は、本当に軽い口説き文句だと思ってたけど、さすがに、半年以上もこんなことを言われ続けると、女としても「本当なの?」ってドキドキしちゃうんだよね。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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