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キャバ嬢がキレる瞬間(17)たかりキャバ嬢

 キャバ嬢がどれ程給料を貰ってるかは、売れっ子、そうでない子で大きく違ってくる。出勤日数、契約で変わる為、具体的にいくらとは言えないが、人気があれば、稼げているとみられても不思議はない職業でもある。

 都内某区、業界人の出入りのある区域で働く、あゆみ。キャバ歴は3年。地元のスナックから始め、都内のキャバ勤めからクラブ勤めとなる。週4の出勤、一週間の指名ランキングでは、10位以内。しかし契約上では、5位に入れるという条件で貰っている時給計算なので、このまま今月も10位以内であれば、また店との契約を再度することに。そうなると大幅に稼ぎが減るので、なんとか頑張って顧客の獲得に励むのだった。

 努力が実り、上位の嬢が引退、引き抜きにあったことも手伝って3位に浮上。予想以上の給料が手に入った。今までの2.5倍。「これで貯金が出来る」とあゆみが帰宅の途につこうとしたとき。

 「3位おめでとうございますぅ。お帰りですかぁ?」

 万年ヘルパーのリサが、にやにやしながらあゆみの足をとめる。「明日も同伴いくつかあるから、早く休まないと。お疲れ様」といったものの、リサ以外のヘルパー数名が更にあゆみの行く手を阻む。

 「今月相当稼いだでしょ? あたしたちが頑張ってあゆみさんのお客盛り上げてあげたおかげっすよねー?」

 と、恩着せがましく言う。
 「いつもヘルプありがとう、じゃぁ帰るから」
 「焼き肉焼き肉! ○○屋の上カルビ、ごちになりますっ!」

 と、勝手にヘルパーだけで騒々しく盛り上がっていた。
 彼女たちは、あゆみの今月の全稼ぎを食いつぶすつもりであろう。過去にあゆみの客にヘルプについた際、何度か怒らせた嬢もいたため、礼をいうどころか、こっちが謝ってほしいくらいだった。確かにヘルプの存在はありがたいが、その職務をきちんと果たせる嬢がどれだけいるものか。彼女たちにはプロ意識が欠けているので、ヘルプなんて無料で飲み食いできる場所としか思ってない。そんな考えは誰の目にも透けてみえる。

 角を立てずにその場は断るが、もはや恐喝に近い状態になりかけた時、幸いにも店長が異変に気が付き、リサたちを追い払ってくれた。

 その場はどうにかなったが、その後もしつこく「奢れ」攻撃を仕掛けられるだけでなく、あゆみの持ち物までお下がりをねだる有様。嬢友達には笑いながら、「飴でも与えておけば黙るんじゃない?」と言われたが、値段に関らず、それにこたえれば、たかりがエスカレートするのを知っていたので頑なに拒否していた。あゆみの態度に腹を立てたリサたちは、ヘルプで入ったあゆみの客の席で、あることないことを吹いて回るようになった。

 予想はしていたことだったし、自分の価値を自身で落とすような真似をするリサたちに注意してやる義理もないが、あゆみは顧客の一人に「ヘルプの子たちにたまには奢ってあげれば?」と決して悪気はないが、軽くいわれたことに、堪忍袋の緒が切れた。

 「何も知らないのに勝手なことを…」といいかけたその時。

 別のあゆみの顧客の席で、リサが「あのケチ女が!」と酔っ払って叫びだし、周りの嬢に慌てて止められていた。その顧客はケチと揶揄されたあゆみのことをかばい、それがリサには気に食わず、キレて酔いも手伝い叫んだらしい。その客は「あいつは、金の一番大事な使い方を知ってるだけに過ぎない」とあゆみをかばったのだとか。

 「直接聞きたかった、ちょっと心が動いちゃうかも…?」と、あゆみは一瞬とはいえドキドキしたのだった。

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