橋下知事の“守備範囲外”激怒は、府庁で記者団の質問を受けて飛び出したもの。香川県が、地方自治体関係者のあいだでは悪名高い「国直轄事業負担金」として国交省の出先機関庁舎の改修費約20億円のうち約7億円を支出することについて「法律上規定があっても県議会に分かるように説明せず、税を徴収するのは言語道断。国は詐欺集団だ」と切り捨てた。
それにとどまらず「香川県には頑張ってもらいたいし、一緒に闘いたい」と共闘を呼びかけた。
国直轄事業負担金とは、国の公共事業として地方に道路やダムを整備する場合、受益者負担として都道府県や政令指定都市が一部負担しなければならない制度。大きな事業であればあるほど拠出する金額も増える。
全国的に地方自治体財政がひっ迫している中、「いらない」ものをつくるために金を出さざるを得ないケースもあり、橋下知事は制度廃止論者。この日も持論を展開したうえで、地方が連帯して国に負担金制度の見直しを求めるべきだとの考えを強調した。
これに先立ち、全国知事会(麻生渡福岡県知事)は制度見直しのプロジェクトチームを立ち上げ、16日に初会合を開いたばかり。同チームの座長は二井関成山口県知事で、宮崎県の東国原英夫知事ら18道府県知事で構成し、橋下知事もメンバーに入っている。東国原知事は「負担廃止で公共事業の総量が減ることを懸念する」と慎重派。一方の橋下知事は即廃止論者の急先鋒で、国の事業決定に関与できないまま多額の支出を強いられることが我慢ならないとして廃止を要求している。
香川県のことにもかかわらず噛み付いた背景には、全国知事会のなかでも近畿・四国をまとめあげて発言力を強めたいとの狙いが透けてみえる。
東の石原慎太郎東京都知事や東国原知事に比べれば、発言が青臭く、軽量とみられがちな橋下知事。今回の件で主張していることは弱者の立場で放った正論だけに、“近畿・四国連合”で勢力拡大となる可能性はある。