警視庁は、写真のほとんどが都内の湾岸地区や港区の公園など、多数の人の目に触れる公共の場所で、深夜ゲリラ的に撮影されたことが公然わいせつ容疑に当たるとし、調べを進めている。
希代の売れっ子写真家は大都市のど真ん中でヌードを撮る理由を、3月ごろ発売された雑誌「広告批評」(マドラ出版)で熱く語っている。
篠山氏によればそれは“都市を覚醒させるためのヌード”という。ありうべからざる場所にヌードを置くことで、普段見ている都市がまったく違って見えるのだという。
ここ最近は中村勘三郎など歌舞伎役者を撮っていた篠山氏。なぜ都市でヌードに力を入れようとしたのか。その理由をこう語っている。
「そんなに面白いヌードっていうテーマをですよ、いま写真家がみんなやらなくなっちゃった。雑誌だってヌードをやると広告が入りませんなんて言ってね、発表の場がどんどん失われているんです。ヌードってまだまだいろんな面白い表現ができるはずなのに、みんなもうやめちゃったからヌードの火を消すのはもったいないと」
出版不況で元気を失っている雑誌をヌードという芸術で再び盛り上げようとする篠山氏の熱意が伝わってくる。しかし同誌には、問題となった写真集のモデルを務めたAV女優の原紗央莉との対談も掲載されており、その中で撮影がゲリラ的に行われたことを暴露。
「5、6人のスタッフがいるんだけど、全部オモテのほう見てるわけ。人が来るか来ないかを。それで僕はカメラ持って、一人女の子がガウンをとる役で、『いいよ!』ってなったら女の子がパッとガウンとって、僕がカチャって撮る」
写真集の中には深夜、モデルが青山霊園の墓石をまたいで写ったヌードもある。先祖が眠る墓を無断で汚された親族の心中も察するに余りある。
芸術か、わいせつか。世間をにぎわせている一冊は、事件発覚直後から都内の大手書店各店に問い合わせが殺到。絶版で出版元にも在庫がないため、中小書店や古書店に一部を残すのみとなっている。「ヤフーオークション」では12日現在、1万6000円を超えるプレミア価格がついている。